職場でのAI--「マネージャーよりもロボットを信頼」が世界平均を上回る日本 - (page 3)

河部恭紀 (編集部)

2019-11-20 07:50

AIは人間の意思決定を支援する存在

 AI活用についてOracleではどのような取り組みを進めているか。「AIはデータをもとにしたテクノロジーなので、企業がいかに幅広く正確性の高いデータを利活用するかがポイント」(原氏)なため、Oracleで目指しているのは、企業の内外に存在してビジネスに活用可能なデータを集めてビジネス価値に変換することと、そういったデータを一元的に管理することで利用の加速を図るということだという。

 たとえば、企業内のアプリケーションにある会計、人事、サプライチェーンのデータに加え、企業がこれまで積極的に管理してこなかった自社ウェブサイトへのアクセス情報や自社に関するツイートなどの情報、そして、企業の外側にあるサードパーティーデータなどを組み合わせてアプリケーションで利活用することだと原氏は説明する。

 同社は、AIそのものを製品として提供するのではなく、業務用アプリケーションに組み込む形で提供する。AIを組み込む注力エリアとしては、「Adaptive Intelligent Apps」「Intelligent UX」「Digital Assistants」の3つがあるという。

 Adaptive Intelligent Apps(AIA)は、意思決定を支援するアプリケーションとしてAIを組み込む。会計・財務の業務を例に、前述のAI活用の進み方にそって考えると次のようになる。

 「Data」では請求処理の自動化、「Insight」では例外処理の把握とグループ化、「Prioritization」では例外処理の順位付け、そして、「Recommendation」ではトランザクションレディネスの推進が可能となる。その結果、プロセスの最適化や手入力作業の削減、より優れた例外処理追跡などができるようになるという。

AI活用進化例:会計の場合

 Oracleでは「AIについて、人の介在なく意思決定をさせるためものという考え方ではない」と原氏。これまでは人がデータを集め、そこからインサイトを得て、それをもとにさまざまな意思決定を行ってきたが、「(意思決定を)アプリケーションを通してサポートしていきたい。最終的な意思決定は人が行うが、それをいかに省力化し、より高度化させるかという観点でアプリケーションの開発を進めている」(同氏)

 Intelligent UXとしては、より良いユーザーエクスペリエンスをユーザーに提供するための「Project Redwood」という取り組みを進めている。同プロジェクトは、製品自体の改善に加え、Oracleのブランディングとも紐付けて、新しいユーザーエクスペリエンスを顧客に提供するためのもの。より人間味あふれ、洗練されており、知性的であることをキーワードとして、アプリケーションのユーザーエクスペリエンスを見直すことを狙いとしている。

 対話型AIによるユーザーエクスペリエンスの強化としては、2つの領域で推進する予定だという。1つ目は「Ask Oracle」。企業のアプリケーションでは特定のメニューをたどって必要な機能にたどり着くという利用が一般的だったが、スマートスピーカーとの対話のようにアプリケーションに問いかけて必要な機能を呼び出せるという。

 もう1つの「Digital Assistant」では、単純な対話形式で処理が実行されるのでなく、経費精算ならばレシートをスキャンすることでどの費用項目に該当するかを確認しながら処理を進められるようになるという。統合基幹業務システム(ERP)、サプライチェーン管理(SCM)、顧客関係管理(CRM)、人財管理(HCM)領域にわたってエンタープライズレベルに耐えられるスキルを提供していくという。

 今後は、営業の領域では「Next Best Offer」や「Recommendations」、人事の領域では「Best Candidate」など、企業のバックオフィスにおけるさまざまな場面において「AIが黒子となってユーザーをサポートする」といったような機能をアプリケーションに組み込んで提供するという。

 「今回の調査を見ても分かるように、日本企業におけるAI利活用も本格的に進んでくると思われるので、こういった機能を通して、日本企業の経営の高度化と従業員の働き方の改革に貢献したいと考えている」と原氏は述べた。

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