富士ゼロックスと慶應義塾大学(慶應大)SFC研究所ソーシャルファブリケーションラボは、デジタルなものづくりを支える3Dデータ基盤を構築した。
この基盤は、文部科学省COI(Center of Innovation)プログラムの一環として2016年に両者が共同開発した世界初3Dプリント用データフォーマット「FAV」の活用範囲を広げたものとなる。
従来FAVは、CADで設計したデータ以外に立体物の内部構造・色・材料・接合強度などを含めた3次元の複雑な情報を保持できる3Dプリント用データだったが、3Dプリント以外の強度を表す構造解析データなどさまざまな3Dデータの情報を扱えるよう新たに仕様を拡張した。また大量のFAV仕様のデータをビッグデータとしてAI(人工知能)で活用することでCADを使わずに、手書き図面からその3D形状を瞬時に表現するといった新たなコミュニケーション手段としての活用も開始されている。
今回、FAVが汎用3DデータフォーマットとしてJISに制定された。これにより、多くの製造業においてFAVの利用が広がり、より効率的な生産プロセスが確立・普及することが期待される。
富士ゼロックスは、製造業でのFAVの活用でモノづくり工程の新たな仕組みを構築し、各工程で発生する3Dデータの一元管理を実現した。例えば、CADで作成した「形状データ」、商品の強度を示す「構造解析データ」、金型製造時に利用する「熱流動解析データ」、商品が設計通りの寸法や形状でできているか確認するための「3D計測データ」など、ものづくりに必要なさまざまなフォーマットの異なる3DデータをFAV仕様に変換し、統合することが可能になった。これにより、従来各工程に分散していて他の工程から見えなかった3Dデータや技術者のノウハウを統合・共有が実現する。
FAVによる3Dデータの一元管理(出典:富士ゼロックス・慶應大)
慶應大では、FAVで記述された大量の3DデータをベースにAI(機械学習)を活用することで、簡単な平面の手書き図から3Dデータを自動生成する技術を構築。慶應大が運営する3Dデータの検索エンジンであるfab3d.ccでは、もともと60万点を超えるSTL(メッシュ形式)ファイルを蓄積していたが、今回この中で適切なライセンスが付与注記されている約30万点をFAV(ボクセル形式)ファイルに変換し、AIにおけるビッグデータとして活用した。これにより、3D形状をデザインしたい場合、高度な3Dモデリングの技術を持たなくても、AIで初期的な3次元形状のイメージを表すことができるようになった。
手書きベースの3Dモデリング(出典:富士ゼロックス・慶應大)
今後、富士ゼロックスでは、ものづくり工程におけるFAVの活用におけるニーズ探索を進め、さらなる価値向上に向け取り組んでいく。また慶應大では、AIや立体地図などの様々な応用領域でのFAVの活用による新しい価値創造を目指すという。