海外コメンタリー

われわれはなぜ今ここにいるのか--テクノロジー界の10年を振り返る

Scott Fulton III (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2020-05-08 06:30

 テクノロジーインフラは、われわれの生活環境と作業環境にどのような変化をもたらしてきたのだろうか?これを振り返るには、2010年における電話やホームムービー、遠距離ドライブがどのようなものだったのかを思い出す必要があるかもしれない。

 10年前の筆者は米ZDNetではなく、ある無名のウェブメディアの編集責任者を務めていた。そのメディアは当初は発展の途上にあったソフトウェアに関するニュースを専門に取り扱っていたがやがて、OSを含むソフトウェアプラットフォームもとり上げるようになり、ウェブを網羅するまでに成長し、台頭しつつあったクラウドのコンセプトを扱うようにもなった。

 筆者は、この10年間でさまざまなメディアに執筆してきた数多くの重大な出来事を思い出すことができる。そして、他の多くの人たちがやっているように、ベスト5、あるいはベスト10、ベスト12とサーチエンジン最適化(SEO)を意識した形で重大ニュースを挙げることもできる。とは言うものの、筆者はジャーナリストの端くれとして、既にそしゃく、分析した結果を挙げつらって歴史を語るのを良しとしない。そもそも列挙が大嫌いなのだ。米ZDNetでデータセンターやハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)、インフラ、次世代アーキテクチャーなどについて数年に渡って書いてきているように、本当に重要なのはわれわれがどういった経緯で今ここにいるのかをより良く理解することだ。

 10年前、われわれは現在の世界とはまったく違う、恐るべき世界に住んでいた。現在では、われわれの作業を支援するプラットフォームは机の上には存在しない。現在のプラットフォームは、データセンターや超大規模施設内に存在しており、ワイヤレスEthernetや光ファイバーケーブルでわれわれとつながっている。

 現在、われわれは文化的な疑問と、未解決の社会的な懸念に直面しており、それらは巻末の注釈ページや「技術セクション」にまとめられるようなものとはなっていない。しかし、この10年間に書きためてきたフィールドノートが、未踏の地を探索してきた日々の記録をひも解くうえで役立つだろう。衝撃的なのは、最終的に歴史の片隅に追いやられると結論付けていた技術に関する論理展開であっても、実際にそれが話題に上らなくなった今から振り返ると、近代的な人間心理学の議論に骨相学の理論を持ち込んでいるかのように感じられる点だった。

 本記事では、この観点に立ちながら2009年(2009という数字からは、10年たった今でもSF的なものを感じさせてくれる)における日々を振り返ってみたい。これにより、当時とは大きく異なる現在の生活や仕事を5つの観点から読み解けるようになる。

できることをサーバーに尋ねる

Siri
SRI InternationalからスピンオフしたSiriは2010年、「iPhone」用のスタンドアローンアプリ「Siri」のデモを初めて公開した(その後、SiriはAppleに買収された)

 この10年間、筆者は何度も(たいていの場合は肯定的な、あるいは否定的な回答を期待しない、カジュアルな対話の中で)、テクノロジーが大きく世界を変えてきたと考えられないのかという質問を投げかけられてきた。筆者はこれに対して、十分な変革ではないと答えてから、じっくり考えてほしいと述べ、部屋の片隅に向かっておもむろに「コンピューターよ、話し方から判断して、私が風邪を引いている確率はどの程度だ?」と問いかけるのだ。

 これを聞いた人は、筆者がSFテレビドラマ「スタートレック」にいまだに入れ込んでいるようだと思うものの、それ以外に何を伝えたかったのかとしばらく考え込むはずだ。数秒間の沈黙の後、筆者はこれが映画「オー!ゴッド」で、John Denverさんが演じる主役が神を証人として呼び出そうとした時のシーンを自分なりに解釈し、演じたものだと説明した後、この種の質問に対する答えを返してくれるようなテクノロジー、そして作り出されているどころか、まだ検討もされていないテクノロジーすべてについて考えてみてほしいと述べるのだ。さっきはほんの一瞬でも、機械音声が聞こえてくると期待したのではないだろうか?

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