近年、良いものを作れば売れるという時代は終わったと言われている。製品やサービスの良し悪しだけではなく、企業も含めたブランド全体の経験や体験といった、いわゆる“エクスペリエンス”の醸成が必要不可欠になっている。
クアルトリクス日本法人でカントリーマネージャーを務める熊代悟氏によると、グローバルでは、80%の企業経営者が自社で最高のエクスペリエンスを提供していると考えている一方で、最高のエクスペリエンスを受けたと回答した消費者の割合はわずか8%だけだったという。
ここに「企業と消費者の間にギャップ(溝)」(熊代氏)がある。では、企業がより良い体験を消費者に提供するにはどうすればいいのだろうか。最も簡単で効果的な手法は、顧客や声を積極的に収集分析し、改善活動を日々の業務に取り入れることだという。
クアルトリクスでは、オンラインでのアンケート調査ツールと、顧客、従業員、ブランド、製品の体験を一元管理するエクスペリエンス管理基盤を提供する。エクスペリエンス管理基盤が対象とするのは、アンケートなどで収集した顧客満足度や購買意向、従業員エンゲージメント、製品フィードバック、ネットプロモータースコア(NPS)、ブランド認知度などのデータ(同社はこれを“Xデータ“と呼ぶ)。これに、販売・売上、顧客情報、会計情報、人事・給与、生産・製品といった業務データを合わせて分析することで、問題点の改善に向けたアクションを支援する仕組みになる。
例えば、「ある商品を買わなかった人はどういう理由があったのか」「その商品を買おうと思っていたが、ある時点で考えを変えたのはなぜか」「改めて買ってもらうには、いつどのようにアプローチすればいいのだろうか」といったことを分析し、実際の改善にまで落とし込んでいけるという。
また、データ分析の専門家がいなくてもインサイトからアクションまでのプロセスを回せるインテリジェンス機能「IQ」を搭載する点も特徴の一つという。テキスト解析や行動誘発の要因特定、統計分析、予測分析などに対応する。
現在、エクスペリエンス管理基盤は、グローバルで1万1000社が導入、日本でも100社を超えているという。2002年に米国で創業した同社は、2018年にSAPが80億ドルで同社を買収すると発表し、2019年に買収が完了している。今後は、同社の強みとするXデータとSAPの強みとするOデータを組み合わせることで、「さらなる深い洞察を導き出せると考えている」(熊代氏)