データセンター移転は、ネットワーク環境を刷新できる最大のチャンスです。これを機にSDNなどネットワークのチャレンジを検討するのはいかがでしょうか。これは「引っ越しを機に実現したい要望」のために必要なものでもあります。
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捨てるもの
次に持っていくものを考えるより先に捨てるものを考えましょう。
(1)すでに利用していないもの
(2)必要だが、引越先で利用できないもの(≒必ず引越先で買うもの)
(3)利用できなくはないが、積極的に利用すると考えられないもの
すでに利用していないものを持っていかないのは当たり前のようですが、データセンターには思いのほかこのような品物が転がっています。自宅であれば「もういらないけれど、懐かしい子供時代の家具や食器」などがあるかもしれませんが、データセンターの備品には思い入れは不要です。
すでに廃止されたシステムの機器、すでにアップグレードされたソフトウェアのマニュアル、備品庫に残された昔の機器の保守部材……といった、ただ捨てるきっかけがなかったものを捨てるチャンスです。また、「誰が使っているのかわからないので誰も手を付けない」という状態になっている機材も、これを機に確認し処分しましょう。
利用できないわけではないが、そのまま持っていくのは適切でない場合もあります。タワー型のワークステーションや古いテープ装置などは、今後の必要性を鑑みて、仮想マシンに移行する、バックアップ方式を見直す、クラウドサービスを利用する…など「モノを持っていくのではなく機能を提供する」形が考えられないか、利用者に交渉するのも一案です。家庭でも、引っ越しを機に本を電子書籍化したり、思い出の写真をDVDにしたりクラウドサービスに預けたりすることもあるのではないでしょうか。

ゴミを搬送し、ゴミに新居のラックを占有させるのは避けたいものです。しかし、部門や個人の力関係などで強く「捨ててください」と言いにくいこともあります。できればトップダウンで引っ越しを機にしたムダ取りのメッセージを出していただき、みなさん引越奉行たちの後押しをしていただきましょう。
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持っていくもの
最後に引越先データセンターに持っていくものを確認します。
(1)自社で所有しており(データセンターの所有ではなく)
(2)移動させることができ(ライセンス的に)
(3)引越先データセンターに設置でき(場所的に/耐荷重的に)
(4)今後も利用する(ビジネス的に/保守期限的に)
保守期限の残っているサーバーやアプライアンス機器、メディアなどがこれにあたるでしょう。
まとめ
今回のポイントは以下の3点です。
- データセンター移転には「インフラ更改」と「物理搬送」の2つのタイプがあり、自社の移転はどちらの割合が大きいのかを考えましょう。
- データセンター移転は、これまでのインフラの課題を解決するチャンスです。移転を機に実現したいことを調達の計画に盛り込みましょう。
- 捨てるもの、買うもの、運ぶものを適切に仕分けて、無駄のない引っ越しを目指しましょう。
次回は、家族の予定と荷物をいつ、どうやって運ぶ? 引越計画と引越作業編をお送りします。
- 細川涼子(ほそかわりょうこ)
- Dell Technologies(EMCジャパン株式会社)ITXコンサルティング部
- サーバー構築、データベースサポート職などを経て2006年EMCジャパン入社。ストレージ製品の導入を経て2009年より現職。プライベートクラウドの企画、災害対策システムの企画、データセンター移転の計画策定や実施支援を多く手掛ける。