2020年に入り、いろいろなメディアが未来予想を立てているが、“2020”という一つの節目でもあり、次の10年間、2030年までのコンピューターの変化を複数回にわたって予想していく。前回の半導体の製造プロセスに関する予想を踏まえ、今回はデバイスのフォームファクターに焦点を当ててみたい。
PC
まず、デスクトップやノートといったPCのフォームファクターは、2030年になっても変わらないだろう。ノートPCの可能性としては、MicrosoftのSurface NEOのような二つ折りができる液晶ディスプレイを搭載する製品の登場により、新たな使い方が提案されるだろうが、現状では物珍しさが先行し、多くのユーザーに使いやすいものとは言い難い。
もしかすると、ロールシートのように折りたたまれた液晶を机や床に広げて、大きな画面で使用できる液晶ディスプレイ装置が現れれば、ノートPCというフォームファクターも大きく進化するかもしれない。
また、プロセッサーなどを搭載した名刺大サイズのPC本体(演算や記録、通信機能だけの装置ともいえる)と、用途に応じてユーザーが好みのキーボードとマウス(コンパクトで小さなキーボードとマウス、もしくは打ちやすさを重視したフルキーボードと手になじむマウスなど)を自在に組み合わせられるような製品が発売されるかもしれない。
ユーザーは、ポケットからPC本体と巻物のようなディスプレイを取り出し、手に持っているキーボードとマウスを接続すれば、すぐにでもPCを利用できるようになるようなイメージだ。ディスプレイ、PC本体、キーボードとマウスなどがワイヤレス接続され、それぞれに軽量で高出力なバッテリーが搭載されるようになるかもしれない。
2020年のCESで発表されたLGの「OLED TV」。OLEDが巻物のように本体に収納できる(LGサイトより)
2020年のCESで発表されたLenovoの2つ折りノートPC「ThinkPad X1 Fold」。ペン入力も行える。下側の液晶上にキーボードを置くことで、通常のノートPCとして使える。ディスプレイを開けば大画面でも利用可能(Lenovoサイトより)
キーボードやマウス以外の新たな入力インターフェースでは、人の脳波をヒューマンインターフェースとしてPCの操作などを行う「ブレインマシンインターフェース(BMI)」などの研究が地道に行われている。しかし、まだキーボードとマウスほど細かな操作ができず、キーボード入力から脳波を使った思考入力に進化するにはまだ研究が必要だ。ただ、テクノロジーとしては面白く、半世紀ほど後ぐらいには、ある程度の実用化のめどが付いていることだろう。
その他の新しい入力インターフェースとしては、「アイトラッキング(視線検出)」を使用して、マウスカーソルをコントロールすることが一般化するかもしれない。現状でも、重度の障害者がPCを利用できるようにするために視線入力システムが利用されている。ただ、マウスを使ったような細かな操作は難しいため、一般のユーザーが利用するにはまだ使いにくい。これもテクノロジーの進化により、アイトラッキングでマウス操作を置き換えることができるようになれば、キーボードから手を離さずにマウス操作が行えるようになる。例えば、MicrosoftのHololens 2でもアイトラッキング機能が用意されている。もう少し精度が高くなれば、PCの新しい入力インターフェースとして利用できる可能性がある。