ハードから読み解くITトレンド放談

2030年までのコンピューターを占う--半導体はどう変化する?

山本雅史

2020-01-22 06:00

 2020年に入り、いろいろなメディアが未来予想を立てているが、“2020”という一つの節目でもあり、次の10年間、2030年までのコンピューターの変化を複数回にわたって予想していく。

 2010年代はスマートフォンが主役に踊り出て、AI(人工知能)を利用したスマートスピーカーやMicrosoftのHoloLens、OculusのVR(仮想現実)ヘッドセットなど、新たなフォームファクターを持つデバイスが登場してきた。2020年代には、どのようなデバイスが出てくるのか。それを考える前に、今回は各デバイスの基礎となる半導体の製造プロセスに関して予測していく。

 現在、台湾の半導体受託製造(ファンドリー)のTSMCは、7ナノメートル(nm)の半導体を製造している。ただ、7nmは先端プロセスのため、ある程度製品を限定した形で提供している。同社は、2020年に新たな露光装置「EUV(極端紫外線リソグラフィー)」を導入することで、7nmプロセスを改良した7nm+を提供する。7nm+は、AMDのプロセッサーZen3世代や、NVIDIAの次世代GPUなどで利用される予定だ。

 TSMCのロードマップでは、EUVに慣れ次第、5nmプロセスの製造を開始する(一部で次世代iPhoneのプロセッサーに5nmが使用されるという話もある)。2020年代後半には、3nmにまで微細化が可能だとしている。その後は、2nm、1nmとロードマップにあるようだが、実際に量産化が可能かどうかは未知数だ。

 ここ数年、Intelは10nmの立ち上げに失敗し、いろいろと苦労を重ねているが、それでもなんとか立ち上がり始めたとしている。2020年後半から2021年には、7nmプロセスを投入する予定だ。この辺りは、実際に量産化が成功するまで順調かどうかを見通すのが難しい。同社のプロセスロードマップでも、5nm、3nm、1nmと用意されている。だが、実際には5nm以降は研究所レベルの話で、実際に量産化するには、さらに長い時間がかかりそうだ。

 TSMCやIntel以外にも半導体製造企業はあるが、7nm以降の先端プロセスを実用化できるのはサムスン電子ぐらいだろう。これは、微細になればなるほど、製造装置や半導体材料、工場などに膨大な投資が必要になってくるためだ。微細化が進めば進むほど巨額の投資が必要になり、将来的にプロセッサーの価格などが少しずつ上がっていく可能性もある(製造量からすれば数ドル~数十ドルの値上げになるだろう)。

Intelの製造プロセスのロードマップ。2021年に7nmを実現し、2024年以降に5nmを実用化していく(Intel Investor Meeting 2019の資料より)
Intelの製造プロセスのロードマップ。2021年に7nmを実現し、2024年以降に5nmを実用化していく(Intel Investor Meeting 2019の資料より)
AMDのCEO、Lisa Su氏は、半導体の微細化「ムーアの法則」は鈍化していると説明している(HotChip2019の講演より)
AMDのCEO、Lisa Su氏は、半導体の微細化「ムーアの法則」は鈍化していると説明している(HotChip2019の講演より)
同氏は、半導体のプロセスが微細化するにつれて、コストも急上昇していると語っている(HotChip2019の講演より)
同氏は、半導体のプロセスが微細化するにつれて、コストも急上昇していると語っている(HotChip2019の講演より)

 また、各社の研究レベルではうまくいっても、実際の量産化レベルで大きなトラブルが起こることもある。今後は、2000~2019年の20年間と同じようなスピードで半導体製造プロセスの微細化が進んでいくことはないだろう。2030年までは、よくても5nmプロセスまで進むが、7nmプロセスで足踏み状態になる可能性もある。

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