RPA“過度な期待”から“幻滅期”に--場当たり的だとガバナンス低下の恐れ

藤代格 (編集部)

2020-02-25 07:15

 ガートナージャパン(港区)は2月21日、国内企業におけるロボティックプロセスオートメーション(RPA)推進状況を発表した。検証目的や一部業務に限定し、2018年から2019年に採用した企業の多くで適用範囲の拡大を目指しているという。

RPAのハイプ・サイクル(出典:ガートナージャパン) RPAのハイプ・サイクル(出典:ガートナージャパン)
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 ガートナーの“ハイプ・サイクル”は、テクノロジーやサービス、関連する方法論、プラクティス、コンセプトなどのキーワードの認知度や成熟度、採用状況、それぞれのキーワードが実際のビジネス課題の解決策や新たな機会の開拓にどの程度関連する可能性があるかを視覚的に示したもの。今回発表されたRPAは、ハイプ・サイクルの上では“過度な期待”のピーク期を抜け、“幻滅期”の底に向かっていると説明している。

導入企業増に伴い、課題も露呈--拡大するIT部門の必要性

 日本のRPA導入企業は年々増加し、2019年8月には47.5%に到達。同時に、取り組みが進みさまざまな課題に直面しているという。

 利用中、利用予定の企業に対する2019年5月の調査では、社内システムからのデータ抽出、転記、二次加工といった作業への活用が多かったという。反面、業務システムデータの更新、社外向けシステムに関連する作業など、障害発生時に影響が大きい業務への活用は検討段階の企業が多いとしている。

 自社のRPA推進体制をきくと、「IT部門が取りまとめ、全社で推進体制を標準化」が67%を占め、「各部署の判断で個別に対応」が21%、「ツールや研修は全社で標準化、推進は各部署が対応」が12%と続いたという。

推進体制(出典:ガートナージャパン)
推進体制(出典:ガートナージャパン)

 日本のRPA導入は、現在でも“ユーザー部門が自部門の業務効率化を目的に自発的に検討を始め、IT部門を介さずRPAを採用する”というケースが多いと説明。IT部門が導入当初から積極的に関わるケースは“むしろまれ”で、個別部門での導入後に知ることも頻繁にあるという。

 アナリストでシニア ディレクターの阿部恵史氏は「こうした結果が出た理由は、個々の部門によるRPA導入で一定の成果を挙げた段階から、適用範囲の全社的な拡大を志向する段階へ移った企業が増えたことが考えられる」と説明。

 「RPAの利用を全社レベルで拡大するため、ITガバナンスやIT統制の観点からのツールの技術的な機能評価、IT統制のプロセス、仕組みづくり、各種標準化、ガイドラインの策定などが必要となる。ユーザー部門が単独で取り組みを進めるのは困難で、IT部門の関与が必須となる」(阿部氏)

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