ヴイエムウェアは3月11日、コンテナー管理のKubernetesを活用する「VMware Tanzu」ポートフォリオと、「VMware Cloud Foundation(VCF) 4 with Tanzu」「VMware vSphere 7」「VMware vSAN 7」を発表した。コンテナーベースのモダンアプリケーションによる企業のビジネス刷新を支援し、IT管理者と開発者の異なるニーズに対応するプラットフォームと位置付けている。
同社は、2019年に買収したPivotalやBitnami、Heptioのポートフォリオを組み合わせ、コンテナーベースのモダンアプリケーションの開発、実行、運用までを一体的に実現する「VMware Tanzu」、仮想化基盤のvSphereとKubernetesを統合する「Project Pacific」を推進してきた。今回の製品群はそれら成果を取り込んだ初のリリースになる。
この日に開催されたオンラインでの記者会見でチーフストラテジストを務める高橋洋介氏は、「デジタル経済の拡大に伴い、企業は新しい価値の提供や収益源の創出のためにモダンなアプローチを必要とし、そこではアプリケーションが中心になる。開発者はITリソースにスピードや柔軟性を求める一方、IT管理者は信頼と安定のITインフラを求める。新しいプラットフォームは真逆にある両者のニーズに応えるものであり、VMwareにとっても次の20年に向けた新たなポートフォリオだ」と説明した。
VMware Tanzuは、モダンアプリケーションのためのソフトウェアスイートバンドルというもので、アプリケーションフレームワークの「Spring Boot」、コンテナーアプリケーション構築のカタログ「Tanzu Application Catalog」、ソフトウェア配信の「Tanzu Application Service」、Kubernetes環境を運用する「Tanzu Kubernetes Grid」、異種混在環境のIT運用を支援する「Tanzu Mission Control」、アプリケーションやITインフラの分析や洞察を提供する「Tanzu Observability by Wavefront」で構成されている。
VMware Tanzuポートフォリオ
このうちTanzu Mission Controlは、オンプレミスやパブリッククラウドのIaaS、マネージド型PaaSといったさまざまな環境へのKubernetes環境の容易な展開を実現するといい、コンテナーのライフサイクル管理やID/アクセス管理、セキュリティ対策、データ保護といった広範な機能をに単一の制御プレーンとして提供する。
Tanzu Application Catalogでは、開発者や事業部門などのエンドユーザーらがオープンソースソフトウェアなど活用し、さまざま要件に基づく独自のコンテナーアプリケーションなど容易に展開したり運用したりできるようにするカタログを提供する。
Tanzu Kubernetes Gridは、Kubernetesをもとに開発されたVMware環境のコンテナーランタイムであり、さまざまクラウド環境などで稼働するコンテナーのイメージやライフサイクルをAPI経由で管理できるようにする。
Tanzu Kubernetes Gridの概要
なお、今回のリリースに伴ってPivotalが提供していた「Pivotal Application Service」はTanzu Application Serviceに統合された。アジャイル開発支援の「Pivotal Labs」は「VMware Pivotal Labs」に、Springも「Spring By VMware」にそれぞれ改称されて引き続き提供されるという。
一方のVCF 4 with Tanzuは、Mware Tanzuの中からTanzu Kubernetes GridとVCFを組み合わせた、vSphereによる仮想マシン管理とKubernetesによるコンテナー管理を一元的に行う新たなプラットフォームになる。先述の「Project Pacific」として開発が進められていた。
高橋氏よれば、VCF 4 with Tanzuでは、Kubernetes APIsやRestful APIを通じてIT管理者と開発者がそれぞれに慣れた方法でアプリケーションにアクセスし、構成管理や変更管理などの運用ができるほか、3層(サーバー、ストレージ、ネットワーク)インフラに比べシステム構築コストを28%低減でき、場所を問わない一貫性のあるITインフラ管理を可能にするという。
VMware Cloud Foundation 4 with Tanzuのイメージ
これによりvSphere 7は、仮想マシンにコンテナーを加えたモダンアプリケーションの実行基盤に進化するとともに、シンプルで迅速な各種運用機能の実現とセキュリティの強化が図られた。開発者側は各種API経由でコンテナワークロードの展開、設定、運用が行える。IT管理者側が慣れ親しんだvCenterにはKube-API Server、ESXiでは内部にコンテナーランタイムを実装され、ネイティブなコンテナー環境の運用や高速処理が実現された。
VCF 4 with Tanzuにおける新機能としては、「vSphere Lifecycle Manager」と「vSphere Trust Authority」が加わる。vSphere Lifecycle Managerでは、ホストハードウェアのファームウェア更新といった管理がよりきめ細かく安全に行えるといい、互換性ガイドを用いた低リスクで信頼性の高いシステム基盤化を可能にする。vSphere Trust Authorityでは、リモートにある信頼できる鍵管理ためのホストを利用することで、サイバー攻撃などによるメインホストの改ざんといった脅威を防ぐようにした。
vSphere Trust Authorityの仕組み
この他にも業界標準を利用したID認証連携や、人工知能技術を用いるワークロードのためのGPUの強化、金融取引など時間がミッションクリティカルとなるシステムへの対応などが図られている。
vSAN 7の新機能
また、vSAN 7ではNFS v4.1およびv3を新たにサポートしており、ブロックアクセスやファイルアクセスによる統合的なファイルサービスを提供できるようにした。