レノボESに聞く、エッジコンピューティングサーバーの現状と可能性 - (page 2)

大河原克行

2020-03-18 06:00

 廣川氏は、「サーバーの設置に制約が多かった工場や倉庫、無線対応や壁掛けを想定した店舗や公共施設での設置に加え、単純にコンパクトで十分な性能を持つサーバーとして採用される例もある。HCIにも対応していることから、エッジやブランチオフィスでは高可用性を求める顧客から問い合わせがある。実際に、Microsoft Azure Stack HCIと組み合わせた導入例もある」と話す。Robottom氏も、「エッジでの事例は日本が先行し、想定以上に活用範囲が広い。実証実験の段階が多いものの、これを本番稼働につなげたい」と語る。

2019年5月開催の年次イベント「Lenovo Accelerate '19」で、ThinkSystem SE350を披露するレノボ エグゼクティブバイスプレジデント兼データセンターグループ担当プレジデントのKirk Skaugen氏
2019年5月開催の年次イベント「Lenovo Accelerate '19」で、ThinkSystem SE350を披露するレノボ エグゼクティブバイスプレジデント兼データセンターグループ担当プレジデントのKirk Skaugen氏

 こうした状況を受け同社は、ThinkSystem SE350を契機にした提案方法を大きく変える姿勢を見せる。

 「半年間の様子を見ると、高性能で堅牢性に優れた製品というものではなく、『何を達成できるのか』『どんな役に立つのか』『現場をどう変えられるのか』といった内容が多い。これを契機にプロダクトアウト型ともいえる箱売りスタイルからソリューション提案によるマーケットイン型のビジネスへのシフトを加速したい」(Robottom氏)

 ThinkSystem SE350に関するパートナー向けのトレーニングでも、マーケットイン型の提案を加速するための内容を盛り込むようだ。同社では、「Smart Verticals」と呼ぶ重点業種に、小売(Smart Retail)、製造(Smart Manufacturing)、物流(Smart Logistic)、医療(Smart Healthcare)の4つを定め、それぞれにおいて最新技術を活用したソリューションを提案している。さらに、AIやブロックチェーンを活用したセキュリティ(Smart Security)のほか、ドローン映像分析、無線メッシュ映像分析といった水平型の提案にも注力。これらの提案活動でもThinkSystem SE350を戦略的に活用していく考えだ。

 コンピューターの歴史は、「集中と分散」の繰り返しと表現されるが、集中化をもたらしたクラウドの次の世代として注目されているのは、分散処理をする「エッジコンピューター」である。

 IoTの広がりに合わせて、さまざまなデバイスから発信されたデータを全てクラウドで処理するのではなく、データの発生源に近いところで処理し、それを利用したり、処理後に必要なデータだけをクラウドに展開したりすることで、より効率的でリアルタイム性のあるコンピューティング活用が可能になる。大量データ処理や画像データ処理、リアルタイム性を要求される場面での活用が期待され、今後の拡大が見込まれる無人店舗でもエッジコンピューターの役割が重要になってくる。

 総務省の情報通信白書では、「クラウドコンピューティングの普及が進み用途が拡大するにつれ、回線コストや回線への負荷、クラウドがダウンするリスクやサイバー攻撃のリスクが問題になるとともに、リアルタイムな情報処理が要求される場面も出てきた。必要な一部の情報処理を端末に近いネットワークの周辺部(エッジ)で行うエッジコンピューティングが注目され各社で取組が行われている」と指摘されている。

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