XeroxのPalo Alto Research Center(パロアルト研究所:PARC)は、イーサーネットやレーザー印刷、光ファイバー通信、自然言語処理など、テクノロジー業界でも極めて重要な意味を持つ幾つかのブレークスルーで、中心的な役割を果たしてきた。イノベーションを起こし続けて2020年で50周年を迎えたPARCは、今も次の50年間のことを考え続けている。
説明可能なAI(人工知能)、デジタルパッケージング、クリーンテクノロジー?
筆者は、過去半世紀にわたってPARCがどれだけの貢献をしてきたかを理解し、PARCが現在取り組んでいる技術について知るために、Xeroxの最高技術責任者(CTO)、Nash Shanker氏に話を聞くことにした。
--この50年間にPARCが生み出してきた技術の中で、あなたが個人的に気に入っているものは何ですか?
イーサーネットは1970年代初頭に、PARCの複数のコンピューター、世界初のレーザープリンター、そして初期のインターネットである「ARPAnet」を接続するローカルエリアネットワーク(LAN)として開発されました。
一番のお気に入りは、多分イーサーネットですね。この技術は巨大な影響を及ぼし、影響範囲も広く、あらゆる場所で使われています。Xeroxが初めて作ったコピー機もそうでしたが、イーサーネットは、人々のコミュニケーションの形を変え、人間の働き方を再定義しました。
イーサーネットは初めて登場したネットワークプロトコルというわけではありませんが、最も成功したプロトコルであり、この40年の間、インターネットと足並みをそろえて成長してきました。オフィスを相互に接続できるようにしたのはイーサーネットでしたし、今も大半のネットワーク通信の技術的な基盤となっています。
--PARCが生んだ技術で、過小評価されているものや、見過ごされているもの、ほかの派手な技術の陰に隠れてしまっているものを紹介してください。
記号と文法をベースにした自然言語処理(NLP)技術に関するPARCの取り組みは、1970年代に始まりました。XeroxとPARCの研究成果として、計算効率に優れた文法モデルである語彙機能文法が開発されたことで、当時のコンピューターでも自然言語テキストを高い精度で理解することが可能になりました。
近年では統計的な機械学習のアプローチが普及しつつありますが、私たちはモデルベースのAIも捨てていません。これは、どちらのアプローチも有用であることが明らかになったからです。機械学習は、大量のトレーニングデータがある状況では有効ですが、機械学習によるアプローチを利用できるだけのトレーニングデータがない分野も多くあります。