本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、アクセンチュアの江川昌史 代表取締役社長と、米CrowdStrikeのScott Jarkoff ディレクターの発言を紹介する。
「これからは国のアジェンダにアラインしながら事業を進めたい」
(アクセンチュア 江川昌史 代表取締役社長)
アクセンチュアの江川昌史 代表取締役社長
アクセンチュアが先頃、米国本社のCEO(最高経営責任者)をはじめとした首脳陣が来日したのを機に開いた記者会見で、江川氏は今後の日本法人の活動の軸として、「当社も社員数1万4000人と、ある程度大きくなったので」と前置きした上で、冒頭のように発言した。
米Accenture史上初の女性CEOとして来日したJulie Sweet氏の会見内容については、関連記事をご覧いただくとして、ここでは Sweet氏の前に日本法人の成長ぶりと今後の活動について語った江川氏の発言に注目したい。
図1は、アクセンチュア日本法人の男女別社員数の推移である。同氏によると、ポイントとなるのは2014年度(2014年8月期)にスタートした働き方改革プロジェクト「Project PRIDE」だ。このプロジェクトを推進したことによって「多くのデジタル人材や女性に入社してもらえるようになった」という。
アクセンチュア日本法人の男女別社員数の推移
その結果、2014年度に比べて2020年度(2020年8月期)の社員数の伸びは、女性が4.6倍、男性が2.3倍となり、トータルではおよそ5000人から1万4000人へと、3倍近くに増加する形になるという。日本法人のみの業績は開示していないが、同氏によると、売上高の推移は社員数の増加とほぼ比例しているそうだ。
冒頭の発言から始まった今後の活動の話では、政府が取り組むこれからの社会像を描いた「Society 5.0」の実現に向けて注力していくことを明言した。図2がその取り組みを表したものである。
Society 5.0への取り組み
取り組みの具体例については図の中の説明にある通りだが、要点だけ挙げておくと、左上はIoTを活用して私たちの普段の生活を効率化しようというもの、左下はAI(人工知能)やRPA(Robotic Process Automatioun)を活用して事務作業を削減していこうというもの、右下はAIやロボットを活用して倉庫や工場などの人員を削減していこうというもの、右上は少子高齢化社会への対応を表したものである。
江川氏はSociety 5.0の具体例についてこう説明した上で、「当社は既にそれぞれの領域において積極的に活動しており、ソリューションの実績も積み重ねてきている」と胸を張った。
江川氏は今年3月から、Accentureの経営意思決定機関であるグローバル経営委員会のメンバーにもなった。これは日本市場の総責任者としての手腕が評価されたものだ。これにより、これまでにも増してグローバルのノウハウを日本に、またその逆の流れも活発になるだろう。今後の同氏の言動にも注目していきたい。