アプリケーションこそがビジネス--シスコがアプリ性能監視の取り組み - 4/4

渡邉利和

2020-04-22 10:00

 シスコシステムズは4月21日、アプリケーション運用施策に関するプレス向け説明会を開催した。2017年に買収したAppDynamicsに関連する国内での取り組み強化や新製品発表などが話題の中心となった。

 代表執行役員社長のDave West氏は、まず全世界で流行中の新型コロナウイルス(COVID-19)へのシスコの対応について話を始めた。同社では、およそ6週間前から全世界の社員がリモートワークに移行している状況だという。同社ではビデオ会議/オンライン会議のためのツールやサービスとして「Webex」を提供しており、同社員のリモートワークに活用されるのはもちろん、無償支援プログラムでさまざまな企業/組織のテレワークを支援している。

 こうした状況を踏まえて同氏が強調したのが「アプリケーションこそがビジネス。事業継続は現在の環境下で欠かせない」というメッセージだ。物理的な接触が制限される現状では、オンラインで事業継続を図ることが重要であり、事業を直接支えるのがビジネスアプリケーションということになる。そして、アプリケーションの正常稼働が実現できるかどうかが事業継続を直接左右することになるわけだ。

 実際に、新型コロナウイルスの流行を受けてさまざまなアプリケーションやサービスが突発的なトラフィック増加からパフォーマンス劣化を引き起こしていることからも、その重要性がうかがえる。2017年の買収以降、日本におけるAppDynamics事業への投資が継続しており、日本語対応などさまざまな取り組みがなされている。その成果として2019年度は対前年比で150%の成長を達成した。

 続いて、アップダイナミクス事業 カントリーマネージャーの内田雅彦氏が、AppDymanicsに関する最新情報を説明した。同氏は、West氏の「アプリケーションこそがビジネス」というメッセージをさらに深掘りする形で国内企業のデジタル変革(DX)に対する取り組みに言及。従来の国内企業での取り組みは既存のビジネスに上積みされる形の“Nice to have(あると良い)”という位置付けだったが、新型コロナウイルスの流行によってこの状況が激変し、今や“Must have(なくてはならない)”ものと変わったと指摘した。

 従来の物理接点での事業を従来通りに継続することが困難となった現在、企業が事業を継続していくためにはデジタル接点の活用が不可欠であり、デジタル接点でのユーザー体験を良好なものとするためには、エンドツーエンドのアプリケーション性能管理(APM:Application Performance Management)が重要になるという。同社ではAppDynamics関連のさまざまな取り組みを強化しているが、同日に申込受付を開始したのが「AppDynamics COVID-19プログラム」で、最大100エージェントまでのAPMの本番環境用ライセンスを無償貸与するというもの。ライセンスの有効期間は2020年7月31日までの約3カ月だが、ユーザー企業の状況を踏まえて柔軟に対応する用意もあるという。

 また、新発表として「AppDynamics Experience Journey Map」「AppDynamicsとCisco Intersight Workload Optimizerとの連携」「AppDynamicsとCisco Intersight、Cisco HyperFlex Application Platformとの連携」についてもそれぞれ説明された。AppDynamics Experience Journey Mapは、アプリケーション内でユーザーがたどる経路を自動的に追跡・可視化するもので、性能問題がアプリケーションのどの部分で生じているのかを分かりやすく表示することができる。

 Cisco Intersightはクラウドベースのインフラストラクチャー管理製品となる。IntersightとAppDynamicsとの連携については、執行役員 データセンター/バーチャライゼーション事業担当の石田浩之氏が説明した。新たに追加されるCisco Intersight Workload Optimizerは、名前からも分かる通り、ワークロードに対してITインフラのリソースを分析・可視化し、性能とコストのバランスを最適化する製品となる。性能が低下している際に指摘するだけにとどまらず、必要な性能に対してリソース割り当てが過剰だった場合、例えば、CPU使用率が低いといった状況が生じていると、これをコストの最適化ができていない状況として調整を提案することもできる。AppDynamicsとの連携によって、アプリケーションの性能に影響を与えるインフラ部分を最適化できる点が強みとなる

 最後に、Cisco HyperFlex Applicaiton Platformはアプリケーションのコンテナー化を支援するためのソフトウェアスタックを組み込んだ形のHCI(ハイパーコンバージドインフラストラクチャー)プラットフォームとなる。オンプレミスで運用されるアプリケーションも徐々にコンテナー化されていく傾向があることから、コンテナー環境をエンタープライズユーザーにとって使いやすい形で提供することを狙った製品となる。

 シスコは従来、ネットワークを核としたITインフラ向けのソリューションを提供していたが、AppDynamicsの獲得によって同社のソリューションがアプリケーションのレイヤーにまで拡大された。そして、今回発表されたさまざまな取り組みは、AppDynamics買収から約3年を経て両社の融合が進展し、アプリケーションとインフラを統合的に運用管理していくための基盤整備ができてきたことを示すものとなっていると言えそうだ。

Cisco HyperFlex Applicaiton Platformの概要

Cisco HyperFlex Applicaiton Platformの概要

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. ビジネスアプリケーション

    生成 AI 「Gemini」活用メリット、職種別・役職別のプロンプトも一挙に紹介

  2. セキュリティ

    まずは“交渉術”を磨くこと!情報セキュリティ担当者の使命を果たすための必須事項とは

  3. セキュリティ

    迫るISMS新規格への移行期限--ISO/IEC27001改訂の意味と求められる対応策とは

  4. セキュリティ

    マンガで分かる「クラウド型WAF」の特徴と仕組み、有効活用するポイントも解説

  5. ビジネスアプリケーション

    急速に進むIT運用におけるAI・生成AIの活用--実態調査から見るユーザー企業の課題と将来展望

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]