今のままの文書管理で起こり得る問題--米裁判での敗訴、テレワークの不完全化 - (page 2)

難波孝 (クニエ)

2020-06-15 07:00

2.テレワーク

 新型コロナウイルス感染症対策としてテレワークが推奨され、政府や都道府県知事が連日のように実施を訴えている。しかしながら、厚生労働省の調査で今回テレワークを実施した人は、わずかに5.6%であったことはすでにご存じであろう。もちろん職業柄テレワークに向かない人もいるが、多くは企業の準備不足が原因なのではないかと考えている。

 また、従来は働き方改革の一環として取り組まれていたが、現在のコロナ禍においては事業継続やセキュリティの観点から企業におけるリスクの一つとして考える必要がある。第二波が来るであろう秋、冬に向けて喫緊に取り組むべき課題であるといえよう。

 その中で、課題の一つとしてあげられるのが文書管理である。

紙文書の存在

 テレワークができない理由として、今や面白おかしく紹介される一番の原因はハンコである。押印のために出社する人の存在も明らかになった。しかし、もっと大きく考えると、そもそも紙文書があるうちはテレワークは成り立たない。完全ペーパーレス化を目標においてこそ初めてテレワークの議論ができるのである。

 また、完全ペーパーレス化するには、文書の取り扱いに関する規定やルール、ワークフローを変更することも忘れてはならない。

アクセス権の管理

 個人の業務が見えにくいテレワークにおいて、アクセス権の管理は必須である。しかしながら今回のコロナ禍においては、緊急事態のため管理が行き届かなかった企業が多かったという。この点はすぐに改善すべきだ。さらに言うと、アクセス権の他にアクセス履歴も取得しておく必要がある。

電子データの検索性欠如

 オフィスワークと違い、同僚や関係部署に気軽に聞ける環境でないため、検索性はさらに重要な要素となる。

その際に検索者が最新版(原本)を取り出せなければ正確な情報が得られず、業務に支障をきたしてしまう。

 もちろん情報漏洩など、文書管理が起因となるリスクはまだまだたくさん存在する。

 しかし今回、数あるリスクの中で上記2つを取り上げたのには理由がある。

  • 「Discovery:関係する全ての文書を期限までに探し出して開示しなければならない」
  • 「テレワーク:紙文書の存在や検索性の欠如で実施することができない」
  •  この2つのリスク、実はこれらの課題を解決することは、紙文書が全て電子データ化され、検索性、原本性が十分に確保された状態、すなわちそのまま即座に業務効率化を成し遂げることに他ならない。

     文書管理にリスクマネジメントと業務効率化の区別は存在しない。あるのは文書管理の重要性に気づき、会社として取り組むか否かの違いのみである。

    (第4回は6月下旬にて掲載予定)

    難波 孝(なんば たかし)
    クニエ インシデントリスクマネジメント担当
    マネージャー

    公認不正検査士(CFE)、文書情報管理士、ファイリングデザイナー。 大手監査法人を経て現職に至るまで文書管理コンサルタントとして15年以上の経験を有する。数多くの不正、不祥事、海外訴訟(eDiscovery)対応に携わった経験を生かし、企業の文書管理に関して業務効率改善のみならずリスクマネジメントの観点からも支援している。

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