2020年11月に行われる総選挙に向けて、米国中の選挙管理当局者が慌ただしく郵便投票の準備を進めており、投票プロセスを効率的かつ安全に進められるよう、多くの措置を講じている。しかし、うまく運営されているシステムであっても、ときには問題が発生する。
例えば2010年には、デンバー郡のある職員が、郵送で届くはずの投票用紙が届かないという知らせを受けた。その職員は、2009年にデンバー市と協力して投票用紙追跡システムを構築したソフトウェア開発会社のSteve Olsen氏に連絡を取った。
Olsen氏に取材すると、同氏は「私たちがその職員と米郵便公社の料金別納郵便配達センターに出向くと、非常に参考になる現場視察ツアーを行った後に、投票用紙を載せた荷物パレットの1つが脇に追いやられ、数日間忘れられていたと伝えられた」と米ZDNetに話した。
Steve Olsen氏
行方が分からなかった投票用紙もその山に入っており、処理を待っていた。Olsen氏によれば、この配達遅延が起きたのは、投票の締め切り日よりもかなり前であったため、最終的に有権者への実害はなかったという。しかしOlsen氏は、この事件は、同社の投票用紙追跡アプリケーション(当時はまだ試験段階だった)が、有権者や選挙管理当局者の郵便投票に対する信頼を高めるのに役立つ可能性があることを示したと主張する。
「この事件は、わが社のシステムが、すべての関係者に対して可視性と説明責任を果たす能力を提供できることを明らかにした」と同氏は言う。
Olsen氏の会社は、それ以降米国の300以上の選挙で投票用紙を追跡しているが、この事例以外には事件や問題は起こっておらず、セキュリティ上の問題も発生していないという。
Donald Trump大統領は根拠なく、郵便投票のプロセスが不正をまん延させかねないと主張している。郵便投票に関する説明責任が保たれていると感じさせることは、2020年の投票システムを確立する上で、もっとも困難な課題の1つだろう。
例えばミシガン州は、郵便投票用の投票用紙を大量に準備している。ミシガン州の州務長官Jocelyn Benson氏は、今回の総選挙では、前回に比べ同州で郵便投票の数が2倍になると予想している。
Jocelyn氏は、最近開催されたオンラインパネルディスカッションで、「私たちには準備ができており、過剰な準備かもしれないほどだ」と話した。「私は、ミシガン州が、安全で安心な選挙を行うために、およそ人知が及ぶ限り、あらゆる措置を取っていると確信している」
その上で同氏は、「ただし私たちには、権力者が有権者に、選挙プロセスの不可侵性に対する疑いの種をまく上で利用する作り話や、誤解や、偽情報をコントロールすることはできない」と付け加えている。
政治的な干渉がなかったとしても、選挙のインフラを整えるのは簡単な仕事ではない。