トヨタシステムズと富士通は、組み合せ最適化問題を高速に解く量子コンピューティング技術「デジタルアニーラ」を活用し、自動車製造に必要な部品の物流ネットワークを最適化する実証を共同で行った。
実証では、数百を超える仕入れ先から部品を仕入れ、数カ所の中継倉庫を通り、数十の工場へ配送する300万以上のルートを探索する問題に対してデジタルアニーラで計算し、トラック数、総走行距離、仕分け作業などを含めた物流コストの最適化を行った。
大規模物流ネットワークのイメージ(出典:富士通)
その結果、大量の最適化計算を非常に短時間で実施できることが確認でき、これによりこれまで見つけられなかった有効な物流ルートの発見、積載効率の向上、トラック数や総走行距離の効率化などにより物流に関わるコストを約2〜5%削減できる可能性があることを実証した。新たなルートは30分以内で計算することができた。
今回適用したデジタルアニーラの新たな求解技術(出典:富士通)
今回の実証では、デジタルアニーラを実際の物流業務に利用するため、大規模な問題求解技術に加え、新たに2つの技術を組み込んだシステムを開発し適用させた。「大域的探索技術」は局所解群から効率的に脱出しながら広範囲に探索する技術で、「動的多点探索技術」は探索の途中状態に応じてダイナミックに開始地点を決定する技術となっている。
今後は今回の成果をもとにデジタルアニーラを自動車製造に関わる物流ルート計算に実適用することを目指し、さらなる検証と実用化を進めていく。トヨタシステムズは、今回蓄積した技術をもとに自動車業界における量子コンピューティングの活用を推進し、新しいモビリティーサービスの創出や社会課題の解決を目指していく。富士通は、今回の実証で用いた大規模組合せ問題を扱うことができる技術を適用した「デジタルアニーラ クラウドサービス」を2020年にサービス提供し、さまざまな業種・業務領域への適用拡大を目指す。