データ資産を可視化し、データ活用の活性化につなげるメタデータ管理 - (page 2)

小林靖典 (クニエ)

2020-10-13 07:15

データ資産を可視化するためのメタデータ管理のポイント

 理想的なメタデータ管理を実現するためには、さまざまな付帯情報を管理しなければならず、非常に大変であることは想像できるであろう。

 しかし、大変だからといって何もしなければ、他企業と大きく差が出てしまう。なぜなら、データを武器にしている企業では、しっかりと体制を組み、目的に合わせて着実に取り組みを実施しているからである。

 デジタル時代が到来している中で、「デジタルにより生み出されたデータを誰もが簡単に把握し活用できる企業」と、「データがサイロ化しており、全社的にデータが可視化できていない企業」では、どちらがビジネスを成功に導く確率が高いか、明確であろう。

 では、まだ取り組みができていない場合、どのように推進していけばよいだろうか。そのポイントを解説したい。

1. デジタルトランスフォーメーション(DX)やデータ戦略の構想策定時点でメタデータの必要性を理解し、目的を明確にする

 どのような目的でメタデータを管理しなければならないのか、戦略や構想策定タイミングで検討する必要がある。ビジネス目的に合わせて、どのような形でデータを把握すべきかを整理し、把握するための手段を考えなければならない。

2. データ基盤構築する際には、先行または並行して、メタデータ管理基盤を整備しておく

 データアーキテクチャ策定時にメタデータアーキテクチャを整備しておく必要がある。どのような形でメタデータを収集し提供するかを含めて、データ基盤全体像を考えなければならない。

 例えば、発生源となるシステムとデータ連携ツールからデータリネージ情報を取得して、データの信頼性を確保するなどである。

3. データガバナンスを推進する中で、メタデータ管理に関する運用やルールを整備する

 データガバナンスを効かせるために必要となるデータオーナーやビジネスルールといった情報を、メタデータの1つとして管理する。また、これらの情報を利用するために、メタデータに関する運用方法も定義する。

4. データのデザインでは業務用語、標準データ定義を管理し、また同時にメタデータモデルも整備する

 データをデザイン(設計)する際には、ビジネスグロッサリーと言われる業務用語を利用して、概念や論理名を定義する。またデータの型や桁、意味定義などは、標準の定義を利用しなければ、各システムでバラバラとなってしまい統制が効かなくなる。共通に定義し、メタデータとして管理する。

 そして、各定義情報(業務機能、システム定義、エンティティ(entity)定義、データ項目定義、コード定義など)を管理するためのメタデータモデルを整備する。

 メタデータ管理は、データマネジメントを推進していく中で最も重要な機能であり、データカタログといったツールがここ数年注目されている。データ可視化のための重要な手段となりつつあるため、まだ未検討の場合は、これを期に是非検討いただきたい。

さいごに

 全5回に分けて、連載させていただいたが、データマネジメント/データガバナンスはまだまだ奥が深く、本連載で紹介できたことはその一端である。第1回でも述べたとおり、データマネジメントはデジタル改革の成否を決めると言っても過言ではなく、今後のビジネスを動かし、競争に勝ち続けるために、データマネジメントは非常に重要な取り組みだ。これからのデータマネジメント/データガバナンスへの取り組みの参考になると幸いである。

小林 靖典(こばやし やすのり)
クニエ データマネジメント/データガバナンス担当
マネージャー

ITコンサルタントとして、システム企画、提案依頼書策定、要件定義分野から、データマネジメント/データガバナンス(データアーキテクチャ、MDM、データHUB、DL/DWH/BI、メタデータ管理、データ品質管理、データガバナンス組織構築、制度策定など)の分野で多数の実績を有する。 クニエでは、データマネジメント、データガバナンス分野の専門家として、データ戦略策定、データマネジメント構想策定、データプラットフォーム実現のためのデータマネジメント全般支援、データガバナンス組織構築支援、データマネジメント教育などに携わる。

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