IBMは、大手製薬会社Pfizerと協力し、いずれアルツハイマー病を発症することを、症状が発生する前までさかのぼって、より正確に予測できるよう支援する人工知能(AI)モデルを開発中だ。
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アルツハイマー病は現在のところ治療法がなく、診断された時点で症状の悪化を防げなくなっている場合もしばしばある。症状には、記憶力の緩やかな低下や、混乱、それまでこなせていた日常作業をやり遂げる能力の低下などがある。
この研究は、The LancetのEClinicalMedicineで発表されている。1948年から5000人を超える人々とその家族の健康を追跡している長期研究「Framingham Heart Study」によって提供された臨床的な口頭テストからの小規模な言語データをサンプルとして用いて、AIモデルが訓練された。
そして、健康な人々のグループの中で最終的にアルツハイマー病を発症した人と、発症しなかった人のデータサンプルを用いてAIモデルの能力が検証された。例えば、AIモデルが65歳の被験者のスピーチサンプルを分析し、85歳までにアルツハイマー病を発症すると予測した場合、実際にその人が発症したか、またいつ発症したのかを記録でチェックするといったことが行われた。
同社によると、臨床規模に基づいた予測、すなわち患者によってもたらされる生物医学的なデータに基づく予測の精度が59%であるのに対し、このリサーチの結果は著しく有意なものになったという。
IBMによると、今回の研究で従来と異なる部分の1つは、データセットに、被験者に認識機能障害の最初の兆候が起こる前の、認知機能に問題のない時に収集したサンプルが含まれていることだ。また、アルツハイマー病は、この疾病に関する遺伝的因子、あるいはほかのリスク因子を有している人など、広範な人に影響するため、幅広い研究が重要だとしている。
同社は「われわれはPfizerの研究員らとの協力の結果、AIモデルの構築に向けた可能性を見出した。このAIモデルの訓練を、拡張された、堅牢かつ多様なデータセットで継続することで、いつの日か、現在発症の兆候がない、あるいは遺伝的因子を有していない、認知能力の低下も示していない大規模な集団の中からアルツハイマー病をより正確に予測する手法を発見する上で活用できるかもしれない」と述べた。
同社は、リスクの高い患者を識別する能力は、予防治療に向けた効果的な臨床試験にも結びつけられる可能性があると述べた。
IBMは、「最終的に、この研究が軌道に乗り、個人の健康やバイオメトリクスのほかの多くの側面と併せた音声や言語の解析を通して、将来的に臨床医がアルツハイマー病の患者のリスクを評価する上で役立つ、よりシンプルで明快な利用しやすいツールの開発を支えられるようになることに期待している」と説明している。
この最新の研究は、IBMが進めているアルツハイマー病の研究の一環となる。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。