本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、ZVC Japanカントリーゼネラルマネージャーの佐賀文宣氏と、アクセンチュアAIグループ日本統括マネジング・ディレクターの保科学世氏の発言を紹介する。
「エッセンシャルワーカーが取り残されるようでは、リモートワークは不十分だ」
(ZVC Japanカントリーゼネラルマネージャーの佐賀文宣氏)
ZVC Japanカントリーゼネラルマネージャーの佐賀文宣氏
米Zoom Video Communications(ZVC)がオンラインで開催した自社イベント「Zoomtopia」において、同社日本法人のZVC Japanが10月16日、日本の顧客向けに「Zoomtopia Japan Session」を開いた。日本法人の代表を務める佐賀氏の冒頭の発言は、その基調講演で、「リモートワーク格差」について語ったものである。
佐賀氏によると、ビデオ会議システム「Zoom」を提供するZVC Japanのこの1年のビジネスは、図1に示すように急成長を遂げた。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐためにリモートワークが急速に広がったためだが、同氏は「感染が終息した後もオンラインならば3つの壁を克服できることが分かってきた」という。
ZVC Japanのビジネス状況(出典:Zoomtopia Japan Sessionより)
1つ目は、地域の壁だ。例えば、どこで開かれる会議でもZoomを使えば、どの地域からでも顔を出して参加することができる。2つ目は、時間の壁だ。例えば、育児や介護に携わる人が仕事の時間を柔軟に取ることができるようになる。そして3つ目が、言葉の壁だ。Zoomには同時通訳を適用できる機能があるので、それを使ってグローバルでのビジネスにおけるコミュニケーションを広げていくことができる。
佐賀氏は、「これらの壁を克服することによって、コミュニケーションのインフラをもっとシンプルにしていくことが、Zoomの使命だ」と力を込めた。だが、「一方で、Zoomを使ったリモートワークの問題点も顕在化してきた」と述べ、その問題点について次のように説明した。
「リモートワークのメリットを享受したオフィスワーカーの生活を、現場に行かなければ仕事にならないエッセンシャルワーカーが支えているという現実を私たちは目の当たりにした。医療や介護、販売店、宅配などで働くエッセンシャルワーカーが取り残されるようでは、リモートワークは不十分だと考えるべきだ」
冒頭の発言はこのコメントから抜粋した。同氏はさらにこう続けた。
「コロナ禍が終息した後も、人間社会を脅かす出来事はいろいろな形で起こり得る。大災害や新たなパンデミック(感染症の大流行)が起きた時、移動しなくてもよい人が移動しないことで、本当に現場に行かなければいけない人が現場に行けるようにすることは当然ながら促進するとして、現場にもっとリモートワークを取り入れる発想力と勇気が、私たちに求められている」
佐賀氏はこう話しながら、図2を示してリモートワーク格差をなくしたい思いを伝えていた。その思いに賛同するとともに、今後のZoomに大いに期待したい。
リモートワーク格差(出典:Zoomtopia Japan Sessionより)