海外コメンタリー

欧州のクラウド、データインフラ構想「GAIA-X」が真価を示すために今何が必要か

Daphne Leprince-Ringuet (ZDNet UK) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2020-11-18 06:30

 欧州のクラウドプロジェクト「GAIA-X」は、急速に勢力を拡大している欧州域外のハイパースケールクラウド企業に対抗し、クラウドコンピューティングの主権を確立しようとする欧州の試みだ。米調査会社のForrester Researchの新たなレポートによると、このプロジェクトが重要な存在であり続けるには、ここ数か月でその価値を証明する必要があるという。

 Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft、Googleが自社サービスのシェアを拡大し続ける中、この欧州のクラウドプロジェクトは最高情報責任者(CIO)たちに向け、一般的なインフラプロバイダーよりも優れた価値をもたらせると示さなければならない。2021年半ばまでにそれができなければ、GAIA-Xが市場にもたらされる頃には「死に体」になっているとレポートには記されている。

 6月に正式に始動したばかりのGAIA-Xは、欧州連合(EU)のデータ関連法によって保護されるクラウドエコシステムを作り上げようと決意した、主にフランスとドイツの代表者によって率いられている野心的なプロジェクトだ。根幹にあるアイデアは、データ保護と透明性に軸足を置いた欧州の法律に確実に準拠する限り、クラウドのどのようなサプライヤーであっても参加できる、クラウドサービスのマーケットプレイスを生み出すというものだ。

 このプロジェクトの核心は相互運用性にある。GAIA-Xは統合された標準と認証を通じて、欧州地域の内外の企業のさまざまなクラウドサービスを単一のシステム上で統合し、業界をまたがるセキュアなかたちでのデータ交換を容易に実行できるようにすることが目的となっている。

 GAIA-Xの確立に向けた原動力は主に、欧州が海外クラウドプロバイダーに依存している状況を緩和したいというものだ。Forresterのレポートによると、意思決定者らの半数以上は「AWS」や「Microsoft Azure」「IBM Cloud」「Google Cloud」を使用しており、欧州大陸の市場の大半が、欧州に拠点を置いていないハイパースケールクラウド企業によって統制されている状況になっているという。

 北米大陸に拠点を置くクラウドプロバイダーへの依存によって、プライバシーの懸念がもたらされる。その1つに米国の「Clarifying Lawful Overseas Use of Data(CLOUD)Act」(「海外データ合法的使用明確化法」(CLOUD法)がある。この法律により、米国のストレージプロバイダーがホストしているデータは、そのデータが海外にある場合であっても米当局によるアクセスが可能になる。「EU一般データ保護規則」(GDPR)の適用域内である欧州にとって、CLOUD法は受け入れられないのだ。

 GAIA-Xプロジェクトは、欧州委員であるThierry Breton氏が「自らの運命の鍵を自らの手に握るため」の手段だとしており、2020年に正式に立ち上げられた。その目標は、利用可能な能力を2021年第1四半期までに明確にするというものだ。そしてその期限は迫っているが、依然として明確なかたちが見えているわけではない。

 このレポートを作成したForresterのアナリストであるPaul McKay氏は米ZDNetに対して、「2021年第1四半期という期限に間に合わせようというのであれば、この段階で技術的な標準定義の多くが完了し、さまざまなユースケースが実証されていなければならない」と述べ、「例えば、クラウドのセキュリティ認証スキームに関する信頼の確立についての概要はあるが、詳細は詰められていない。現在において、これはものごとを進める上での重要なポイントとなっている」と続けた。

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