コンタクトセンター向けのサービスを提供するジェネシス・ジャパンは11月30日、顧客/従業員体験の変革に向けた企業の準備状況(レディネス)に関する調査レポート「Genesys Asia Pacific Customer Experience Transformation Readiness Index 2021」を発表した。同調査には、日本を含むアジア太平洋(APAC)6カ国が参加した。
同調査におけるレディネス指数は、リーダーシップ、従業員エクスペリエンス、デジタルエクスペリエンス、事業継続計画(BCP)、AI(人工知能)導入、クラウド導入という6つの要素に基づいて算出された。調査では、APAC6カ国から約500人、日本からはビジネスやITの意思決定者約80人の回答があった。回答者の企業におけるコンタクトセンターの席数は、10~3000席と幅広かったという。調査の結果、APAC全体のレディネス指数は54%だった。新型コロナウイルス感染症の流行でクラウドの導入やBCPの策定が増加したことによってスコアが上昇したが、リーダーシップや従業員エクスペリエンスなどの分野では、改善の余地があるとしている。
日本はクラウド導入で先行するものの、課題が山積
日本はパブリッククラウドの導入において他のAPACの国々に先行しており、市場規模は2018年の80億ドルから2023年には180億ドルに成長すると予測されている。クラウド導入率は49%とAPACでは最高位で、顧客体験を変革する第一歩だとジェネシス・ジャパンは見ている。だが、CX(顧客体験)とEX(従業員体験)のレディネス指数は43%と、アジア太平洋地域で最も低かった。特にデジタルエクスペリエンス、BCP、リーダーシップのスコアが低く、3つの課題が浮き彫りになっているという。
課題1:デジタルエクスペリエンスを中心としたオムニチャネルの実現
過去のさまざまな調査において、デジタルチャネルへの移行が進んでいるものの、日本の顧客が企業と対話する際、主なチャネルとして音声を選択するという結果が出ている。デジタルへの移行スピードは他国と比べて遅く、その要因の一つとして日本の高齢化が挙げられる。
今回の調査結果では、「デジタルチャネルの利用率がコミュニケーション全体の30%未満」と述べた日本の回答者が55%に上った。その結果、APACにおけるデジタルエンゲージメントのレディネス指数は41%なのに対し、日本は36%となった。
日本人口の大半にリーチできる「LINE」など、メッセージングアプリをはじめとしたデジタルチャネルが増加する中、日本企業が顧客満足度を高めるには、デジタルインタラクションの数を増やし、コミュニケーションチャネルの変化に素早く対応していくことが求められるという。
課題2:BCPの新たなモメンタムを維持する
事業継続のレディネス指数は、APACの55%に対し、日本は33%だった。
今回の調査では、多くの日本企業がBCPの一環として、アウトソーシングに頼っていることが明らかになった。加えて、新型コロナウイルス感染症の流行を受けて、さまざまな業界で在宅勤務へのシフトが半ば強制的に進んでいる。在宅環境の構築に欠かせないクラウドの導入が加速する中、エージェントが安全なワークスペースを利用できるようにするべきだという。
在宅へのシフトは、自然災害時におけるサービス維持の対処法であるマルチサイト環境とともに重要なポイントであり、顧客エンゲージメントを継続的に確保し、信頼性とロイヤルティーを構築することが可能となる。2020年を「リモートワーク元年」とする日本において、企業は長期的なBCPとして在宅ワーク対策を加速させる必要がある。
課題3:クロスファンクショナルチームによるカスタマージャーニーのサポート
カスタマージャーニーはコンタクトセンターにとどまらず、複数の部門を横断するため、企業のトップレベルが監修する必要がある。今回の調査で、日本は他国と比べてクロスファンクショナルチームの確立が遅れていると判明した。APACにおけるリーダーシップのレディネス指数は62%だったのに対し、日本は45%だったという。日本企業が部門の垣根を超えた相乗効果を生み出すには、カスタマーエクスペリエンス分野のエグゼクティブによるリーダーシップを積極的に導入することが重要だとしている。
ジェネシス・ジャパン 社長のポール・伊藤・リッチー氏は「日本の最大の強みは、実行力の高さにあると見ている。顧客サービスから全体的な顧客体験へと焦点を移すことで、日本企業の競争力を高め、グローバルリーダーとしての地位を強化することができる。日本でのクラウド導入率の増加は心強く、敏捷性と市場適応力の基盤となるものなので、その加速に向けた取り組みを引き続き追求していきたい」と述べる。