ここ数年の間に最高データ責任者(CDO)の役割は、ガバナンスリーダーからデータサイエンス/AI(人工知能)エキスパート、そしてデジタルトランスフォーメーション(DX)リーダーへと急速に進化しています。この役割の変化に伴って、裏方的な立場であったCDOも、目に見える形での成果を経営幹部から期待されるようになりました。データ戦略の橋渡し役や調整役になったことは役割上望ましい進化であり、アナリティクスのための企業とテクノロジーへの投資が進んだことでCDOは良い立場から成功に貢献できることが多くなりました。
こうした状況のもとで、新型コロナウイルス感染症が発生しました。現在の環境でも、CDOは引き続き会社のデータ管理とアナリティクスのスキル向上において重要な役割を果たしています。しかし感染症の世界的流行により、多くの企業が進めていた長期的な変革の取り組みよりも、データからリアルタイムで価値を引き出すことがますます重視されるようになっています。世界中が不安定なこの状況において、生き残るため、また今後の成長に向けた準備のために、可能な限り機会と収益を確保することは、政治的にも財務的にも健全性の面でも不可欠です。
ということは、お客さま、従業員、市場をもっと理解するために、今、データを活用できなければなりません。世界中がニューノーマルの意味を模索している今こそ、CDOは簡素化に取り組むべきです。ただしその手段は、機械学習の開発に取り組むことではありません。情報とアナリティクスから、市場の変化に応じてシンプルかつ速やかな変革を迅速に進めることです。CDOは主に3つの領域でこの課題を推進していく必要があります。
1.ビジネス全体のデータの可用性
ご存じのようにデータはあらゆる場所に存在し、猛烈な勢いで増えています。ほとんどの企業が悩まされているのが、膨大な量のデータがあるにもかかわらず、価値あるデータとそうでないデータを区別する能力も、データをインサイト(洞察)とアクション(施策)に変換する方法を分析する力も限られている、というパラドックスです。実際のところ、手元のデータの大半はアナリティクスに対応していないか、利用できる状態にありません。また、最も価値があるはずの財務データと顧客データが、アクセスや変換を妨げる曖昧または複雑なセキュリティルールに縛られていることはよくあります。
アナリティクスのメリットに関する理論的でアカデミックな議論は、コロナ禍の状況では、CDOとその企業にとってほとんど意味がありませんでした。危機的状況においては、「データを利用できない」「タイムリーな意思決定のための安全かつ丁寧なデータ配信が善意の統制ポリシーによって妨げられている」といった状況を調査している場合ではありません。感染症の世界的流行から得られる大きな教訓の1つが、データが必要になる前に、アクセス用の明確な緊急プロトコルを使って、データ資産のタグ付けおよび保護計画を慎重に立てておくべきということです。
新型コロナウイルス感染症対策に取り組むに当たり、経営幹部に必要なのは、安全でスケーラブルな在宅勤務ポリシーを策定するための従業員の人事および施設データ、財務予測を見直すためのリアルタイムの販売予測、正確なシナリオプランニングのための財務/政策に関するデータです。CDOは、このような多様なデータソースに会社がアクセスするときの手間や、入手したデータが業務にどの程度役立つかを綿密に検討する必要があります。そうすることで今後の計画を立てられるだけでなく、次に避けようもない危機に見舞われたときに適切に立ち回れるようになります。
データカタログについては、CDOは、アナリティクスをオンデマンドで活用できるように支持する必要があります。ビジネスアナリティクスのニーズに、後からではなく、本当に必要なタイミングで対応するには、データをオンボード、プロファイリング、説明、保護、準備できるかどうかが鍵になります。CDOは、データを常に使用可能な状態にしておくプロセスを検討しなければなりません。これには、データ統制を活用した自動のオンボーディングとカタログ化の展開が含まれます。これにより大量のデータ資産が迅速かつ明確に定義、分類され、閲覧権限を持つ人物に対してプロビジョニングされます。アクセシビリティーとセキュリティの絶妙のバランスを実現するには、これしかありません。