事例3:パッケージから脱却した製造業--品質劣化を避けるために内製化
背景
製造業のC社は、生産管理システムに市販のパッケージを活用し、サポート期限を迎えるたびにバージョンアップしていた。バージョンアップ費用と維持運用費が高額であることから、より長いライフサイクルを持つシステムの開発を目指していた。
また、当時はオフショアを含め多数の開発者が関わっており、日本とオフショア先となる海外との伝言ゲームでのプロジェクト進行が常態化。仕様の認識に相違が生まれやすい状態だった。さらなる効率化と品質の向上が望めない状況から脱却するため、システムを内製化する方針を示し、ローコード開発を用いることとした。
C社もこれまではウォーターフォールでシステムを開発していたが、このシステム開発ではアジャイル開発を採用した。保守性の向上、開発を自動化による品質向上を狙い、開発ツールとしては設計工程からOutSystemsを採用した。
体制
体制は、IT部門のメンバーが中心となり、OutSystemsによるシステム開発を生業とするIT企業が技術支援を行う形態とした。IT部門の中に標準化チームを編成し、OutSystemsによる開発スキルをIT部門内へ展開した。IT部門から開発者10人とリーダー1人が、IT企業から1人が参画した。
生産性向上効果
今までの開発手法で進めた場合3年程掛かる開発規模であったが、1.5年でリリースまで完了し、開発期間を50%短縮した。開発の生産性は、20~30%向上した。
課題
開発を進める上で、大量の部品票のデータによるパフォーマンス劣化の懸念が発生したが、OutSystems用にロジックを作り直すことで劣化を回避した。
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ここまで、工数削減、開発生産性向上を実現した事例を紹介した。最大60%の工数削減を実現している事例もあり、「システム開発の工数削減、開発生産性の向上」を実現している。IT部門にとってのメリットを十分得られることを理解いただけたのではないだろうか。
また、経済産業省が委託したみずほ情報総研の調査(PDF)によると、IT人材は2020年で30万人、2025年で36万人の需給ギャップが発生すると見込んでおり、実際、システム開発の現場でも人材不足を感じている読者も多いと思われる。そのような人材不足の解決策としても、ローコード開発は非常に有効であると筆者は考える。
次回は、工数削減、開発生産性の向上以外の効果に焦点を当てて、事例を紹介する。
(第3回は1月上旬にて掲載予定)
- 坂本 毅(さかもと つよし)
- クニエ CIOサポート担当 マネージャー
- IT企業、金融機関を経て現職。IT企業では、金融や製造業を中心にシステム運用アウトソーシングのセールスからデリバリーフェーズまで、数多くのプロジェクトを経験。金融機関では、IT経費削減、システム構造改革、システム開発の生産性向上、IT中計の策定などに従事し、IT戦略に関する豊富な経験を有する。現在は、ITマネジメントに関するコンサルティング業務を手掛けている。