書面のデジタル化最前線

電子文書の利用を推進する諸制度の動きとテクノロジー--前編

田上利博 (サイバートラスト)

2021-01-18 06:00

 新型コロナウイルス感染症の対策で現在もなお、数多くの企業がテレワークを実施していることだろう。東京商工会議所が2020年11月に公表した「テレワークの実施状況に関するアンケート」によると、テレワークを「一時期実施していたが現在はとりやめた(約22%)」があるものの、約53%の企業がテレワークを継続している。

 テレワークを継続実施するための課題として、「社内のコミュニケーション」に課題を抱える企業が最も多いが、「書類への押印対応」については、緊急事態発令前も発令以降も課題の上位に挙がっている。コロナ禍において「書類への押印対応」については出社しないと対応できない業務の一つで、テレワークにおける企業の足かせになっていることが十分に理解できる。

(出典)東京商工会議所 2020年11月「テレワークの実施状況に関するアンケート」
(出典)東京商工会議所 2020年11月「テレワークの実施状況に関するアンケート」

 日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)とアイ・ティ・アール(ITR)が、2020年9月に公表した「企業IT利活用動向追跡調査2020」によると、コロナ禍において押印業務がクローズアップされている背景から、企業における電子契約の採用済みの割合は2020年1月と変わらないが、「今後電子契約の採用を検討している」割合が約8ポイント増加した(自社開発システムの利用と外部サービス利用の合計)。

(出典)「企業IT利用活動動向追跡調査2020」(JIPDEC/アイ・ティ・アール)
(出典)「企業IT利用活動動向追跡調査2020」(JIPDEC/アイ・ティ・アール)

 契約書をはじめ、注文書や請求書、領収書などのさまざまな書類を電子化して効率化できる法制度が整備されているが、商慣習などから脱却できずにこれまでのハンコという文化にとらわれていた企業が多いのではないだろうか。

 コロナ禍以前、契約書などの書類については紙の書類に対する押印や印紙の貼付に加えて、取引先への郵送など、会社に出勤しなければ実施できない業務を行ってきたと思う。これらは多くの企業でもテレワークを継続する上での課題の大半であったことが調査の結果でもうかがえる。筆者が所属する会社もコロナ禍以前は紙の契約書であったが、現在は電子契約を基本としている。

 しかし、コロナ禍において、書類の押印や郵送業務などは、果たして従業員の安全面を考慮すれば適切であろうか。感染拡大を防止する観点では、オフィスへ出社せずに業務を遂行できるよう検討する必要がある。新型コロナウイルス感染症対策を機に、多くの企業だけでなく、政府が制度の見直しを図ろうと取り組みを進めている。

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