改正電子帳簿保存法のインパクト

市野郷 学(オープンテキスト技術本部 ディレクター) 2016年03月31日 07時00分

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 1998年に施行された「電子帳簿保存法」が2015年3月末に改正され、改正電子帳簿保存法として新たに公布されました。

 証憑電子化に伴うスキャナ保存の要件緩和が中心となる今回の改正ですが、この要件緩和によって企業ではどのようなメリットを享受することが可能になるのでしょうか。

 今回は、そんな電子帳簿保存法の基本についておさらいしながら、改正されたポイントや運用における注意点、企業における証憑電子化の実践例などをわかりやすく紹介します。

新たに改正された電子帳簿保存法とは?

 電子帳簿保存法とは、1998年当時の規制緩和推進の流れを受け、国税関係帳簿書類の保存に係る負担を軽減する目的で施行された法律です。当時はERPが火付け役となり基幹系の業務システム導入が加速していた時期で、電子帳簿保存法によるデータの長期保管を可能にするアーカイブシステムも大きな話題になっていました。

 そして2005年には、これまでコンピュータで一貫して作成されたデータの保管だけが認められていた国税関係帳簿書類が、紙文書であってもスキャンを行うことによってデータ保存が認められるという規制緩和が行われたのです。

 この際に制定されたのが通称「e文書法」と呼ばれるものでした。しかし、このe文書法に適用するための環境整備はハードルが高く、結果としてさらなる規制緩和を求める機運が高まることに。それが、今回の改正電子帳簿保存法へとつながっていくわけです。

 一般的に、税法上保存義務が発生する帳簿や書類には、仕訳帳や総勘定元帳など「国税関係帳簿」と、貸借対照表などの決算関係書類及び取引先から受け取った注文書や領収書など取引関係書類を合わせた「国税関係書類」が該当します。電子帳簿保存法によって、これらの帳簿や書類をデータとして保存、もしくは紙文書をスキャンして電子的に保存することが認められるようになっています。今回の改正は、このスキャナ保存についての規制が緩和されています。

改正電子帳簿保存法のポイント

 では、今回スキャナ保存に関してどんな要件が緩和されたのでしょうか。大きくは紙文書の保管だけでも申請が可能になる「関連帳簿の電子保存」をはじめ、「重要文書の金額基準」「電子署名の付与が不要」「その他のシステムの機能要件」の4点が挙げられます。

 ここで大きいのが、金額基準の撤廃です。3万円以上は認められていなかった重要文書の金額基準が撤廃されました。改正以前は、この金額基準によって国税関係書類の一部は紙による保存を余儀なくされ、申請する企業が増えませんでした。

 それが今回の改正で大きく解消されることになったのです。さらに、アクセス履歴が厳格に管理されていることを前提に、電子署名の付与が不要になった点も大きな要件緩和の1つです。

 なお、忘れてはならないのが「適正事務処理要件」と呼ばれる社内規程の整備と運用が新たに設けられたことです。この適正事務処理要件は、内部統制を担保するための体制や手続きなどの社内規程を設け、その規程に合わせた運用を行わなければなりません。

 ここで、改正におけるポイントについても触れておきましょう。紙文書を受け取ったあとの電子化のタイミングが明確に規定され、多くの企業では業務サイクル後「速やかに」入力する機会が増えると考えられます。具体的には、最長1か月(業務サイクル後)と1週間以内(速やかに)に電子化する必要があり、これまでの運用を見直していく必要がでてきます。

 また、財団法人日本データ通信協会が認めているタイムスタンプを利用した改ざん検知の仕組みを適用する必要があることも忘れてはなりません。さらに、適正事務処理要件に適用するため、情報の入力者や電子化した人物がきちんと特定できる体制を整備することも改正後の大きな要件になってきます。

 ほかにも、原本との同一性・見読性を確保するために装置としてのスキャナに関する具体的な要件が定められましたが、残念ながら現時点(2016年1月)では、スマートフォンでのスキャニングは認められていません。

 また、解像度やカラーなど電子計算機処理システムの要件も明確に規定されており、2つ以上の任意の記録項目を組み合わせて条件設定が可能な検索機能についても確保する必要があることが定められています。特に検索機能については、帳票ツールなどにデータを移行する際に検索できなくなるケースが考えられ、十分注意する必要があります。

 今回新たに加わった適正事務処理要件では、起票からスキャン、保管責任者まで各事務担当者の間でチェック機能を働かせる必要があり、毎年監査を行っていく必要があります。なお、スキャンを専門に設置するなど、事務担当者は担当を分ける必要があることもしっかり認識しておくべきです。

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