毎日の改善で業務負荷を1週間で20分の1に
2020年、新型コロナウイルス感染症が広まり、4~5月には緊急事態宣言が出された。全国的にお祭りや物産展が軒並み中止に追い込まれ、例年の出展者も甚大な影響を受けてしまうことになった。
「我々ができることは何か、と悩みました。そこで、ふるさと祭り東京のブランド力を活かしたECサイトを立ち上げ、出展者さんが参加してもらうことによって、少しでも営業機会を作ろうと考えました」(望月氏)
ECサイトの仕組みは持っていないため、まさにゼロベースからスタート。しかし、コロナ禍の影響を受けている出展者のことを考えれば、一刻も早くオープンさせたい。とにかくECサイトの開発に集中して2~3週間で完成、5月19日にオープンしたのだ。
時間がないうえ、ECサイトを運用するチーム全員がkintoneを使えるわけではないため、当初はメールとExcelを使ったオペレーションを想定していたという。業務が増えると破綻する可能性が高く、オペレーションが固まったら、課題を一つずつkintoneでクリアしていこうと考えていたそう。
しかし、その思惑はいきなり初日に破綻することになる。ECサイトの購入者や発送先は個人情報となるので、適当に扱うことはできない。ECサイトからCSVファイルを落とし、Excelに注文情報を転記、パスワードをかけて、出展者それぞれにメールで送信する。この作業は3人がかりで6時間もかかったという。
これでは仕事にならないため、出力したCSVファイルをkintoneに読み込ませて、出展者データを元に分類。kMailerでパスワード付のメールを作成、まとめて送信できるようにした。
また、kViewerで出展者のマイページを構築し、毎日の売り上げをいつでも確認できるようにした。メールでやり取りしていた商品発送後の発送伝票番号の連絡は、フォームブリッジでの入力に切り替えた。
朝からこれらの作業を行う夕方までkintoneアプリを改善し続け、初日に3人で6時間かかった作業が2日目には2人で2時間、3日目は1人で2時間、4日目には1人で1.5時間、そして1週間後には1人で1時間もかからなくなっていたという。たった1週間で、業務負荷を約20分の1にした手腕、恐るべし、である。
落とし物管理の運用にも
kintoneによる業務改善は止まらない。東京ドームでは取得物があるとノートに記載し、イベント終了後にノートのコピーと落とし物を、施設内を案内する専用カウンターであるインフォメーションに渡すという管理方法を採用していた。つまり、落とし物をした当日はインフォーメーションには情報がなく、対応できなかったのだ。
そこで、拾得物届アプリと紛失物届アプリを作成し、デジタル化した。kViewerを活用してインフォメーションでも情報を確認できるようにした。

拾得物業務もノートからkintoneへ
最後に、今後の展望を聞いた。
「今はkintoneはイベント部署でしか導入されていません。今後、他部署で使うことになった時は、蓄積したノウハウを活用して、課題解決に役に立てたいと思います」と望月氏は締めてくれた。
導入して2年経っておらず、部署内のスモールスタートなのに、ものすごく大きな導入効果を上げられた東京ドーム。望月氏の「餅は餅屋」でプロを頼るという戦略と、ITに詳しくない初心者ユーザーのことを考えたアプリ構築という工夫が成功のキモだった。これからkintoneを活用しようと考えている担当者にはとても参考になる導入事例と言えるだろう。