政府は新型コロナウイルス感染拡大の第3波に対して発令していた緊急事態宣言を10都道府県で3月7日まで延長し、テレワークによる「出勤7割削減」の要請も継続する形となった。テレワークをニューノーマル(新常態)と受け止める風潮も高まっている中、労務管理上で気になる課題が浮かび上がってきた。
日本生産性本部がテレワークの実態調査を公表
テレワークにおける労務管理上の課題が浮かび上がってきたのは、日本生産性本部が1月22日に公表した「第4回 働く人の意識に関する調査」のテレワークに関する結果である。2021年1月12〜13日に、企業に勤める20歳以上の1100人から回答を得た。この調査は、2020年5、7、10月に実施した内容を継続したもので、今回は4回の時系列変化を見ることができる。
筆者は、IT業界と直接の関係がないこの調査結果を信頼しており、第1回目の時にも本連載で記事にした。今回注目したのは労務管理上の課題だが、その前に、テレワークの「実施率」と「勤務効率」の結果も興味深いので、以下に図解していこう。
図1は、全国でのテレワークの実施率である。最初の緊急事態宣言が発令された2020年4月の後の5月調査(1回目調査)では31.5%となったが、その後は20%前後で推移し、今回の1月調査でも22.0%と10月調査時より微増にとどまっている。
図1:全国でのテレワークの実施率(出典:日本生産性本部「第4回 働く人の意識に関する調査」)
これでは政府が要請する「7割」とかなり隔たりがあるが、全国で職種も問わない形だと、このグラフの結果が実態なのではないか。
ならば、地域や職種別に見ればどうなのか。図2が、勤務地1都3県とそれ以外の地域の実施率である。1都3県とそれ以外の地域ではやはり倍ほどの差があるが、どれも7割にはほど遠い。
図2:勤務地1都3県とそれ以外の地域のテレワーク実施率(出典:日本生産性本部「第4回 働く人の意識に関する調査」)
図3は、職種別の実施率である。これを見ても専門的/技術的な仕事の5月調査が51.9%と最大値で、やはり7割には届かない結果となっている。この職種別では、どの仕事にもホワイトワーカーとエッセンシャルワーカーが入り交じっているのだろう。このグラフの結果を見ると、7割の対象となり得るのは「大都市圏のホワイトカラー」だけだと認識せざるを得ない。
図3:職種別のテレワーク実施率(nは1月調査、横軸は%、出典:日本生産性本部「第4回 働く人の意識に関する調査」)