帰属意識に対する回答と相関が強い項目の上位を見ると、「私は職場で敬意を持って接してもらっている」「私は自分のチームが行う仕事を誇りに思う」「当社はオープンで率直なコミュニケーションがなされている」「私は仕事中に安全だと感じる」「当社はチーム間の協力が効果的になされてい」といった回答を寄せている。
クアルトリクス EXソリューションストラテジーディレクター 市川幹人氏
ウェルビーイングもグローバル平均は67%が肯定的だが、国内は58%。中立的な回答は25%、否定的な回答は17%だった。この結果からクアルトリクス EXソリューションストラテジーディレクター 市川幹人氏は「背後にあるものはつながっている」と分析する。
興味深いのは帰属意識とウェルビーイングの相関関係だ。国内の調査結果を帰属意識別に見ると、自身のウェルビーイングを肯定的に捉えた従業員の割合は75%。逆に帰属意識を持たない従業員が自身のウェルビーイングを肯定的であると回答した割合は21%。また、職位別のウェルビーイングを見ると一般従業員は54%、中間管理職は65%、上級管理職は70%と職位が高いほどウェルビーイングも高まる結果が明らかになった。
※クリックすると拡大画像が見られます
※クリックすると拡大画像が見られます
他方で従業員が上司などに自身の意見を伝えるフィードバックの機会を比較すると、2019年の29%に対して2020年は51%と22ポイントも上昇している(グローバルは6ポイント増の69%)。フィードバックを重視する割合も34%(2019年)から85%(2020年)と51ポイントも増加した。実際にクアルトリクスにも「リモートワーク下の不安感から、支援を求める企業の声が多く寄せられている」(市川氏)という。
だが、企業側が十分に対応しているか尋ねたところ、肯定的な回答は15%(2019年)から10%(2020年)と5ポイントも減少した(グローバルも34%から27%に低下)。企業側の施策不足が従業員に与える影響度を見ると、施策が十分だと感じる従業員のエンゲージメントは85%に対して、不十分は35%。ウェルビーイングは85%(不十分51%)、継続勤務意向は95%(同70%)といずれも大きなマイナス要素となっている。
市川氏は「声を集める機会は増えているが、アクションが追いついていない。社員の声に基づいたアクションだったのか、企業の施策が社員に伝わっているかが重要」だと分析。マネージャーが率先して行動を示すことで、帰属意識やウェルビーイング、継続勤務意識の向上から従業員エンゲージメントにつながると持論を述べた。
テンプレート群の提供やサポート体制の強化
Qualtricsは2018年11月にSAPが買収。米国時間2021年1月28日に全米証券業協会(NASDAQ)市場に上場している。日本市場の2021年の事業戦略として、XM(エクスペリエンスマネジメント)の国内市場普及を加速させるため、「海外のベストプラクティスを提供しつつ、国内業務に沿ったテンプレート群の提供やサポート体制の強化を図る」(熊代氏)
厚生労働省がリリースしている設問や分析方法をテンプレート化し、従業員エクスペリエンス改善クラウドサービス「Qualtrics EX」基盤で従業員のストレスチェックを確認する仕組みを国内で提供する予定。米国ですでに開始され、複数自治体で採用、運用された新型コロナ感染防止ワクチン接種の予約・接種状況の視覚化や接種証明書の発行するソリューションの国内提供を早期に行う予定だ。