ガートナー ジャパンは3月10日、「日本のデジタルイノベーションに関する展望」を発表した。ペーパーレスなどの電子化の取り組みに終始してイノベーションを軽視するデジタル変革(DX)は大きなビジネスリスクになると指摘している。
展望は、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえて、企業のDX戦略や電子化の取り組みに関連し、ITリーダーが特に今後3~5年で重視すべき動向を取り上げた。要点は次の2つ。
- 2024年までに自社のDX戦略が実際に何を意味するものかを明示していない企業の80%以上は競合企業にシェアと成長機会を奪われる
- 2024年までの間ペーパーレスに関わる個々の既存テクノロジーの展開に1年以上かける企業の8割以上は時代遅れの企業になる
1つ目の要点では、コロナ禍による企業がテレワークを拡大せざるを得ない状況に置かれ、ペーパーレスやハンコレスなどの電子化の取り組みが加速したと分析。しかし、企業におけるDXの意味合いが、新規事業開発などのデジタルイノベーションから、ペーパーレスやハンコレス化、SaaS活用など喫緊のニーズを満たすための取り組みに偏るケースが増えているとした。
同社アナリスト バイス プレジデントの鈴木雅喜氏は、電子化の取り組みが広がる中でデジタルイノベーションへの取り組みを弱めるべきではないとし、「3~5年後には、DXの側面で成功した企業と成功しなかった企業の差は今よりも大きくなるだろう」と話す。
2つ目の要点では、コロナ禍により散発的な取り組みでしかなかったペーパーレスとプロセスの電子化が一気に加速したとする。短期でスモールスタートする導入ケースの一方、提案依頼書(RFP)を作って何年もかけて大規模移行しようとするケースもあり、昔ながらの進め方などを堅持し流儀を変えない企業は生産性とスピードの面で大きく立ち遅れると警鐘を鳴らす。
これらの要点に加えて同社は、「2024年までの間、簡易なワークフローの全社展開に際し、IT部門の適正な管轄の下でビジネス部門に運用を任せられない企業の8割以上は、展開の取り組みに失敗する」とも予測。鈴木氏は、「DXに向けた取り組みとして、目の前のペーパーレスやハンコレスはもちろん、将来のビジネス改革や新事業開発といった面でも変化を求め、舵を切るのにまたとない機会が訪れている」とコメントしている。