ガートナー ジャパンは、日本企業の従業員の中で「今の会社で働き続けたい」という意思を持つ人の割合は世界平均より少ない――という調査結果を明らかにした。
この結果は、同社の提言「日本のCIOが押さえておくべき人材の新常識」の1つとして示されたもの。日本のCIO(最高情報責任者)は、人材に関する4つの誤解を認識し、新たな常識を基に時流に即した人材戦略を推進すべきだとしている。
人材に関する誤った考えと正解
「今の会社で働き続けたい」という意思を持つ人の割合については、ガートナーが世界で実施した調査では、「今の会社で働き続けたい」と考えている人の割合が世界では平均39%であるのに対し、日本では35.8%と、世界平均を下回っているという。
ガートナーでは、従業員が意欲を持って長く定着するような組織をつくるためには、「従業員を管理する」という発想から、「従業員エンゲージメントを強化する」という発想に転換することが有効だとしている。
「Z世代は業務とプライベートの境界線があいまいである」という指摘があり、これについては、2018年以降、企業にはミレニアル世代(1980~1994年生まれ)とZ世代(1995年以降生まれ)というかなり異なる2種類の「若い世代」が存在するようになっており、これまでの理解が必ずしも当てはまらなくなってきているとしている。
ガートナーの調査からZ世代は、ワークライフバランスを重視する姿勢がミレニアル世代よりも圧倒的に低く、むしろ業務を通じて経験の幅を広げ、自己成長を実現することに期待を示す傾向が強いことが明らかになっている。
これについてガートナーでは、CIOは両者が対立せず互いを尊重しながら最高のパフォーマンスを出せるような環境を用意しなければならないとし、そのためには、働き方のルールやガイドラインを全社一律で設定するのではなく、個人が自らの業務の性質、プロジェクトの状況、好みに合わせて、働き方や働く場所を選択できるようにすることが重要だと指摘する。
「ハイパフォーマーの定着には、待遇よりも受け入れ側の能力が重要である」については、同社の調査から、入社の決め手は「給与」と「企業の成長性と安定性」が常に上位を占めている一方で、退職の決め手としては「同僚の能力」「マネージャーの能力」「人事管理」など、人に関係する項目が重視されることが明らかになっているという。
ガートナーでは、内製力強化のためにビジネス部門からの異動や経験者採用を計画しているCIOは、同時にIT部門内の意識改革、受け入れ態勢の充実、マネージャーの再教育を進める必要があるとした。
「スキル予測に基づいて習得したスキルの大半は、実際には使われない」については、ガートナーが実施した大規模な調査で、予測に基づいて習得したスキルのうち50%以上は使われておらず、むしろ予測せずに都度のニーズに応じてスキル教育を実施した方が、活用されるスキルは多かったという結果が出たという。
ガートナーはこれについて、マネジメントや意思決定、分析評価、経営分析など、不変的に必要とされるビジネススキルの場合は、中長期的な育成計画を適用するとした。またデータサイエンスのように、これからの全てのビジネスにおいて必須のスキルと、経営戦略の実行に密接に結び付いているテクニカルスキルの場合は、1年程度の短期間での育成計画を、それ以外のスキルについては、アジャイルな育成計画を実行することが推奨されるとしている。