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Ridgelinezの今井CEOに聞く--コロナ禍のDXトレンドや富士通とのDX

國谷武史 (編集部)

2021-05-06 07:00

 Ridgelinez(リッジラインズ)は、富士通グループのデジタルトランスフォーメーション(DX)ビジネス専門会社として、2020年4月に設立された。世界中でコロナ禍の厳しさが続く中、企業や組織でのDXの勢いは衰えていないと見られるが、現状はどうか。設立から1年を迎えた同社CEO(最高経営責任者)の今井俊哉氏に、DXの状況や成長戦略、富士通とのDXの取り組みなどを尋ねた。

--この1年のビジネスはいかがでしたか。

Ridgelinezの今井俊哉CEO
Ridgelinezの今井俊哉CEO

 プラスとマイナスの両面があったと思います。未曾有のコロナ禍でリモートワークが強制されたり緊急事態宣言の発出が繰り返されたりといったように、人々の生活様式はかなりの変化を強いられました。現在のDX)に華々しいイメージもありますが、コロナ禍によって、ようやく本当に変わらなければならない喫緊の課題としてトランスフォーメーション(X)の必要性が強く意識されたように思います。これをプラスの面と捉えれば、変革の動きが堅調に進む状況といえるでしょう。

 一方で、マイナスの面は人々の接触が厳しく制限されるようになったことだと思います。例えば、われわれのようなコンサルティングは目に見えないものを提供するビジネスですから、本来はお客さまに会い、さまざまな意見を交わしたり雰囲気や意識、感覚といったものを共有したりすることが大切です。しかし、コロナ禍ではそれができず、特に初めてのお客さまにとってRidgelinezという新しい会社から目に見えないものを得るというのはなかなか難しいことでしょう。富士通グループの会社だとご存じのお客さまとは、オンラインでも接することはできますが、やはりコロナ禍のため仕方なくオンラインでやらざるを得ないといった感覚があります。

 2020年後半はさすがに慣れましたが、前半は様子見のムードの中、既存のお客さまとは「少し我慢すれば会えますよね」、新規のお客さまも「しばらくしたらお会いしましょう」といった会話を交わすなど、ある意味でモラトリアム状態でした。コロナ禍を過ごしていく中、元には戻らないと納得するしかなく、変化しなければならないことを意識するようになったといえます。

 (2020年)4~6月は、会社を立ち上げたばかりのところに最初の緊急事態宣言が重なり大変でした。オフィスも感染対策で工事を中断せざるを得ず、4月のオープン予定が7月になり、8月から本格的にビジネスをスタートさせました。初めてのイベント(TRANSFORMATION SUMMIT 2020)は安全を考慮してオンライン開催しましたが、ここでは教訓もありました。例えば、分科会にはリアル開催では参加が難しい遠方の方々も参加でき、想定より多くの方々が来場されました。オンラインならではのリーチ(到達)のしやすさといったメリットを体験しました。

 結果的に2020年度の業績は、当初計画から15%ほど下振れしています。多くの新規プロジェクトが夏以降にずれ込んだ影響ですが、むしろこの程度の影響で済んだともいえます。

--顧客企業におけるDXの状況はいかがでしょうか。

 お客さまの業種構成は、製造が3割強、流通や通信・ハイテクがそれぞれ2割強、その他が金融・公共などです。富士通からの継続プロジェクトが多く、Ridgelinezとしての新しいお客さまのプロジェクトはまだ1割ほどです。

 例えば、データドリブン経営の実現を目指す大手建設のお客さまのプロジェクトは、富士通と協働し、経営目標や現場の具体的な変革をわれわれが担当しています。建設はコロナ禍での厳しい業界の1つでして、人材確保が難しくなり、感染リスクになる接触も減らさなければならず、作業のやり方を大きく変えなければなりません。以前は紙の図面を皆で見るといったやり方ができましたが、感染リスクでそれができませんから、にわか仕立てでもデータで共有する仕組みにしないといけないわけです。

 お客さまの意識が変わりだしたのは(2020年の)秋頃でしょうか。まず経営層が本当に何かしなければならないと危機感を募らせ、相談が増えました。ただ、現場はまだそこまでの意識になっていない、異なる会社や部署、担当者の間でデータを共有することが長らく無かったのが実態です。現場ではさまざまな変更が発生しますが、そうした対応もできるだけ避けたいという感覚でした。

 しかし、コロナ禍で現場がデータ共有をきちんとやらなければならない、ジョイントベンチャーのようにさまざまな企業が関わる中でプロジェクトを進めるには、データを共有しなければ難しい、これまで必要性を感じながら避けていたことに向き合い、生産性を上げなければ売り上げが立たなくなりました。

 また、ある化粧品の企業ではデバイスセンサーを使ってお客さまの肌状態を測定し、それに合わせてスキンケアの化粧水を配合し提供するという月額制のサービスをサブスクリプションで提供しています。サブスクリプションはよく定額制ビジネスと勘違いされますが、正しくは月額のような形でもまず顧客関係を構築し、その関係性の中でより良いサービスを継続的に提供していくというビジネスです。このサービスの場合なら、測定と化粧水の配合を続けていくことで顧客の肌状態のデータを蓄積、解析することで、天候や肌の状態に応じたより良い配合を提案したり試したりできるわけです。

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