NECは、5月21日からオンラインイベント「NEC Business Forum」を開催している。同イベントは、「NECをご愛顧いただいているみなさんに、NECの事業の方向性とその取り組み状況を伝える場」(代表取締役執行役員社長兼CEOの森田隆之氏)として初開催され、森田氏も4月に同社トップに就任してから初めてユーザー向けイベントに登場した。
NEC 代表取締役執行役員社長兼CEO(最高経営責任者)の森田隆之氏
「『未来の共感』を創る」と題して基調講演を行った森田氏は、5月12日に発表した中期経営計画や新たに目指すPurpose経営などについて説明した。
NECは、2014年にPurposeとして「Orchestrating a Brighter world」を掲げ、「安全・安心・公平・効率という社会価値を創造し、誰もが人間性を十分に発揮できる持続可能な社会の実現を目指します」というステートメントを打ち出した。森田氏は、「このPurposeが全てのスタート、というのが今回の中期経営計画で最も大事にしていること」と切り出した。
Purposeは、当時のマネジメントチームの12人が数カ月に渡り、毎週のように議論をした結果、作り上げたものだという。森田氏もそのメンバーの1人で、講演でNECの歴史を振り返った。
NECは、1899年に日本初の外資合弁第1号企業として創業した。創業者・岩垂邦彦氏の「日本で電話を普及させる」という強い思いと、ベンチャー精神に溢れた企業だったとし、これを第一の創業と位置付けた。また、1977年を第二の創業と定義した。
森田氏のNEC入社は1983年。その頃に会長を務めた小林宏治氏が、「C&C(Computer & Communication)」を提唱した。これが第二の創業の中核をなす出来事になる。米国でコンピューターと通信はお互いの領域を侵してはならないということから独占禁止法で規制されていたが、小林氏は、この2つの融合は技術的必然であるとする世界観を示し、C&Cを掲げてみせた。
森田氏は、「いわば今日のインターネットの世界を予見し、当時のコンピューターと通信それをつなぐ半導体の3分野で、NECは世界トップ5のポジションを獲得した。黄金期ともいえる第二の創業」と振り返る。しかし、その後にバブル経済が崩壊し、日本の“失われた10年”やリーマンショック(2008年)、東日本大震災(2011年)と、厳しい経営環境が続く中で、NECは多額の赤字を出すことになった。
「社内にNECが無くなるかもしれないという危機感が強まり、存在意義を自ら問いたださざるを得ない状況に追いやられた。マネジメントチームの結論は、NECのユニークで強いテクノロジーにより、安心・安全・公平・効率な価値を創造し、社会に大きな貢献をしなければならないということ。そのためにNECの再生を決めた」(森田氏)
NECは、2013年に行われた再生を第三の創業と位置付けている。それから7年が経過した2020年度の業績は過去最高の最終黒字を達成した。森田氏は、顔認証やAI(人工知能)、セキュリティ、5G(第5世代移動体通信)などの領域で、世界に誇れるテクノロジーを市場に提供していると現状を報告、「まだ途上だが、普通の会社に戻れたと思っている」と述べた。
NECの3つの創業期
また、新型コロナウイルス感染症の拡大が社会環境や価値観を大きく変えていることに触れ、「この動きがさらに加速する中で、デジタル技術が社会の変化や変革で必須だと認識された。NECのPurposeが正しい方向であり、NECの技術や事業の責務が非常に大きいことを改めて認識している」とした。
今回の中期経営計画は、このPurposeの実現に向けて、戦略と文化の両面から一体で取り組みを進めるものになるという。「『NECが何の会社なのか?』と問われても、具体的な事業戦略とその結果で答えることかできる。それを実現する人を支え、応援する文化に対して会社として本気でコミットすることに取り組む。NECの志に社員だけでなくお客さまや社会全体が共感、共有してもらうことが必要。そのためにPurposeには具体性が必要で、それを示す。中期経営計画においては、NECが考える2030年の社会イメージを具現化した『NEC 2030 VISION』を発表した」と説明した。