RPA、バックオフィスからフロントオフィスに拡大--ボットは現在の2倍に

河部恭紀 (編集部)

2021-02-18 07:40

 ロボティックプロセスオートメーション(RPA)製品を提供するAutomation Anywhereの日本法人であるオートメーション・エニウェア・ジャパン(AAJ)は2月16日、RPA利用に関する調査結果「Now & Next: State of RPA report」を発表した。調査対象となった企業のほとんどがRPAへの取り組みを積極的に進めているという。

 この調査は、Automation Anywhereが調査会社Enterprise Technology Research(ETR)と共同で実施しており、4000以上の同社顧客から収集したデータとGlobal 2000とFortune 5000の数百人の経営層へのインタビューをもとにしている。

 調査対象となった組織の90%がRPAの取り組みを開始しており、その過半数(63%)はRPAを導入または積極的に拡大しており、27%が現在検討中だという。

 その一方で、後れをとっている業界もあり、ほとんどの医療組織ではRPAを単に「現在検討中」としているか、導入をまったく計画していないという。オートメーションが普及していない他の分野としては、サービス/コンサルティングや行政などが挙げられている。

 「日本では、デジタル庁の発足や新型コロナウイルス感染症流行の影響などから、2021年は検討が急速に進むと思われる」とAAJでカントリーマネージャを務める由井希佳氏は述べる。

 典型的な組織では、業務に「ボット」(ユーザーがRPAを使用して作成するソフトウェアロボットで、ルールに基づいたビジネスプロセスを学習、模倣、実行する)を使用している従業員は9.9〜14.1%程度である。一方、高い成果を上げている企業からは最大90%の従業員がオートメーションを活用できるという意見もあり、ここに膨大な成長の可能性が秘められているという。

 RPAを導入または導入を計画している組織は、最優先事項として「生産性の向上」を挙げており、その実現率は78%。100を超えるボットを導入している組織は、目標を達成する確率がより高いという。RPA導入理由の第2位と第3位には、「従業員のより価値の高い業務での活用」と「コストの削減」がそれぞれ挙がっている。

 RPAに対する投資は、過半数(57%)の組織が今後12カ月以内で増加を予定しており、それによってボットの数も平均で現在の2倍になると予想されている。RPAを導入した組織は投資を平均14カ月で回収しており、初期の投資に対して平均250%の投資対効果(ROI)を実現していると調査は述べている。

 今後12カ月間のテクノロジー関連の優先事項として、RPAは3番目となっており、「サイバーセキュリティ」と「クラウドへの移行」に続く結果となっている。調査によると、RPAよりもスマートアナリティクスを優先した組織は、RPAによるROIがはるかに低かったという。「トップが優先事項としてガバナンスを効かせなければ、投資対効果も上がらない」(由井氏)

 RPA導入の障害は、「RPAの経験やスキル不足」が55%で「予算不足」(36%)と「リソース不足」(34%)を上回る結果となっている。スキル不足を解消する手段としては、トレーニングプログラムやオンラインコースがRPA熟成度の高い組織では一般的となっており、個別のコーチングや特定スキルを持った人材の採用を上回っている。

 高い成果を上げた組織(調査対象となったすべての組織と比較して3.75倍以上のROIを実現)が他社と異なる点としては、以下のような項目が挙げられると調査は指摘している。

  • RPAを最優先
  • パンデミックの影響によりモチベーションが向上
  • 従業員をより価値の高い業務に活用することを重視
  • 日常業務において組織の90%の従業員がボットを活用できると確信
  • 総所有コスト(TCO)を比較的重視していない
  • ボットの数が少なかった時でも高いROIを実現し、より多くの従業員がボットを利用するようになるにつれさらにROIが増加
  • ベンダーの選択基準でメンテナンスの容易性と信頼性を重視
  • 本部長や部長レベルでのRPAへの高い期待
  • 専門のプログラミング教育を受けていない“シチズンディベロッパー”による開発を奨励

 Automation Anywhereの顧客は90カ国4000社以上となり、260万を超えるボットが使われているという。それらの顧客から得られたインサイトとして、これまで最も多いユースケースは、定型業務の効率化として、IT、人事、財務、総務などのバックオフィス業務を中心としていた。だが、グローバルパンデミックや顧客体験への取り組みから、コールセンターや営業などのフロントオフィス業務への自動化のニーズが高まりつつあるという。

 このような市場の状況を踏まえ、AAJでは2021会計年度の日本市場における戦略としては、「あらゆるモノをデジタル化へ」という”デジタル化”、「自動化を全ての人に利用可能な世界へ」という”自動化”、「すべてのお客様を変革ステージへ」という”トランスフォーム”の3つをアピールしていくという。

 企業は生産性や競争力を高めるためにデジタル化を生かしきれていないという背景を由井氏は挙げ、「このように変化が激しいDX時代においては、内製化としての人材育成がキーファクターとなるのは間違いないと思っている」と述べた。

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