パッケージは、販売管理と仕入れ、在庫管理に「PCA商魂DX/商管DX」のクラウド版を採用。オフィスツールにはGoogleの「G Suite」(現Google Workspace)を採用し、メールの送受信で連携させる形とした。その後の保守サポートも寿商会がおこなっているが、同社はシステム面のサポートを担当し、従業員のIT活用に関してはコニカミノルタのITヘルプデスクサービス「IT-Guardians」を契約し、サービスを併用する形にした。
![実際に活用するiPad上の画面(出典:大彦)](/storage/2021/07/08/6a63e1f2d93db5ed8d4ba8f4735e5b7a/210709_fm_005.jpg)
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現場である店舗には1台ずつiPadを導入し、簡単な画面操作でデータを入力できるようにした。発注時には、iPad上の「FileMaker Go」の画面で入力するとデータが「FileMaker Cloud」のサーバー上に取り込まれ、相手には発注依頼がメールで送信され、本部のPCでもそれが確認できるようになる。
![大彦 花木氏](/storage/2021/07/08/99f776237014b0d6b40108ee47bf3829/210709_fm_003.jpg)
大彦 花木氏
これらのシステムを2カ月で開発し、2018年夏に稼働を開始した。その結果、社内でのデータの流通は完全電子化され、店舗あたり1日0.5時間、本部では1日3時間の時間短縮を達成。大彦の本社スタッフで事務領域を主に担当する花木和代氏は、手作業は半分になったと笑顔を見せる。
「メーカーからの返信はほとんどがファクスなので手作業はなくなりませんが、こちらから流すことはなくなりました。それによる紙の削減に加えて、毎日の店の売り上げについても今は売り場で入力してもらえるので助かっています」(花木氏)
また、ウェブサイトの運用管理も寿商会に移行し、トータルで費用換算すると年間280万円のITコスト削減効果があったという。単純に従来の基幹システムとの比較では、システムの保守コストが4分の1に大幅削減できたとのことである。
入力画面構成に配慮し誰もが使えるシステムに
![発注画面のイメージ(出典:大彦)](/storage/2021/07/08/e44562791348c04579463940cec78b02/210709_fm_006.jpg)
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システムを開発するにあたり、配慮したのが使い勝手の部分である。年配の従業員もいて、当初は「誰もiPadを使ったことがない」(山上氏)という状況であった。そこで機能を絞り、画面構成にも配慮して、iPadのFileMaker画面で入力フィールドを作る際、通常の開発のセオリーでは未入力状態で空欄となる部分に、「数量」「グラム数」「商品名」などと、その場所には何を入れるのかを表示しておくことで、マニュアルがなくても直感的に使える仕様とした。
その結果、開発した新しい基幹システムは、店舗と本部の従業員が使いこなせる生きたシステムとなり、大彦の働き方改革を支援。また山上氏は現在、他の企業の経営で金沢にいることが多いが、そこからもクラウドにアクセスして在庫を管理できる仕組みとなっている。今後は、「財務の支払業務を金沢からでもできるようにするなどFileMakerの利用範囲を拡張し、他にも昨今の状況に併せて月1回の店長会議もリモートでできるようにシステム活用の領域を広げていきたい」と、山上氏は更なるデジタル変革に意欲を見せる。