「(CC、BCCが本当に必要な状況は)全体の数%程度。それならオープンにした方がよい。メールは途中でCC/BCCを追加、削除し、新たな表題を付けて異なるスレッドになると、メールをさかのぼって確認しなければならない。メールは冒頭の挨拶から締めの言葉がつづられ、大事な要件は中間の1~2行程度だったりする」
他方でビジネスチャットについて白石氏は、「チャットならメンション機能(話題に関するメンバーへの声かけ)が気軽に使えるため、会話も自然に盛り上がる。過去の会話も容易にさかのぼれることも大きい」と利点を強調した。当初の「メールで十分」という意見もビジネスチャット導入数カ月後には届かなくなったという。
チャットで業務スピードが向上
ビジネスチャットの利点は、閲覧性やコミュニケーションの向上だけではない。宮崎銀行に限った話ではないが、「各部横断的な会議が多いものの、議論内容の認識や議論内容、各部の意見集約など準備が多い。(場合によっては概要説明に時間を消費し)次回の会議に持ち越してしまう」(白石氏)ケースは少なくない。
だが、ChatLuckが同行に定着したことでビジネスチャットが業務スピードを加速させたという。
「(会議実施)当日はコアな部分だけ議論できる。(関係者との事前調整も背景や結論まで)皆が見られるのは効率的だ。メールでも可能だが単発的なやりとりになってしまう」(白石氏)
他にも上席をChatLuckのルームに登録することで、リアルタイムに情報が共有されるため、「『報連相』も同時に実現できる」(白石氏)
ビジネスチャットの利点は他にもある。白石氏は「想定以上に多くのルームが立ち上がっており、多様なシーンに応じて活用されている」と新たなITツールが定着していく様を力強く語った。
また、ChatLuckのルームは非公開を選択できるが、一部ルームは公開されている。事例としては、行内事務に関するQ&Aをやりとりするルーム。「ルームを公開することで、全行員がリアルタイムでQ&Aのやりとりを確認でき、問い合わせ件数の削減につながった。この使い方は現場から生まれた」(白石氏)
ビジネスチャット導入当初は、基本的な操作手順を解説する行内マニュアルに止めていた。上記のような活用方法は、「情報共有効率化の観点から現場が考えだした」(白石氏)と積極的な姿勢を評価した。同行は他にもアンケート機能なども活用している。
コミュニケーション活性化狙って全行員が平等に使用
ビジネスチャットの導入で気になるのがガバナンスだ。メールの場合、特定条件でアラートを発するような設定も可能だが、ビジネスチャットでは難しい。宮崎銀行も「私的利用を遮断するのは難しい」(白石氏)と指摘する。
だが、コロナ禍でリモートワークが新常態となると、同僚との雑談する機会が大幅に減るなどコミュニケーションが減少し、ビジネスアイデアも浮かびにくい。そのため同行はビジネスチャットを全行員が平等に使用できる仕組みを採用した。
その理由として、「『何をどこまで使わせるか』は必ず付いてくる議論。端的に述べればメールは連絡ツールだ。たとえば支店に(ビジネスチャットを)使わせない場合はメールが必要になり、ガバナンスの負荷やコスト増が発生してしまう」(白石氏)と中途半端に導入するのではなく、ビジネスへの影響を鑑みて判断を下す重要性を語った。
冒頭で述べたように地銀を取り巻く環境は厳しい状況にある。業務プロセスのデジタル化が生産性向上につながることは、改めて述べるまでもないが、白石氏は「基本的にデジタル化だが、すべてではない。(自行が)目指す姿に合致するソリューションをしっかりと検討した上で導入する」ことが重要だと強調した。