佐野学園(千代田区)は、「言葉は世界をつなぐ平和の礎」という建学の理念のもとに設置された高等教育機関で、4年制大学の神田外語大学、専門学校の神田外語学院という2つの教育機関と、3つの関連会社からなる5つの組織(神田外語グループ)を運営している。学生数は、大学が約4000人、学院が約2000人で、教職員数が常勤、非常勤を合わせて約1000人。グループを束ねる本体の佐野学園にも、数十人の職員が働いている。
稟議書だけで年間800~1000本--何事も紙
昨今、初等中等教育を中心に教育(Education)のデジタル化やそれを支援する「EdTech(エドテック)」などが普及し、教育業界では学生との接点におけるデジタル化が注目を集めている。その一方で、学生教育を支える学校の内部では、業務フローや働き方の改革はあまり進んでいないのが実情である。
佐野学園 法人本部 人事部 シニアマネージャーの藤田氏
佐野学園 法人本部 人事部 シニアマネージャーの藤田加津氏は、元々学校業界自体が紙や申請業務が多いとしたうえで、同学園のバックオフィスでも同様の課題を抱えていたと振り返る。
「当学園では、稟議書だけで年間800本から1000本が挙がってくる。常に紙に囲まれていて、何事も紙で進んでいく。その中で決裁にも時間がかかるし、今どこで目詰まりを起こしているのかもわからない。決裁が終わった後も、ファイルがすぐに見つからない。さらに毎年度大量のファイルを保管していかなければならず、校舎の中に保管場所を見つけることも難しかった」(藤田氏)
そこで藤田氏は、ペーパーレス化と回付に時間がかかるという2つの大きな問題を改善するべく、人事と総務、経理の有志とともにデジタル化の検討を開始。解決策として浮上したのが、ワークフローの構築であった。「メールや回付もびっくりするくらい長いルートを辿ってくるので、メールやExcelではとても対応できない。ワークフローシステムを通じたデジタル化しか選択肢はなかった」と藤田氏は話す。
ワークフローとDBを両立--他大学の事例を参考に
当初は、掲示板やインフォメーションで活用しているイントラネットでのワークフロー構築を考えたが、同学園の複雑な回付ルートに対応できなかったため、別途ワークフローシステムの導入を検討。その過程で目に留まったのが、ドリーム・アーツの「SmartDB」である。学校法人向けのセミナーで他大学が取り組んでいる導入事例の話を聞き、本格的にシステムの調査を開始した。
SmartDBを評価した部分として藤田氏は、ワークフローが作れることと、単体でデータベース(DB)が持てることを挙げる。「検討にあたり、他社のワークフローシステムとも比較した。ワークフロー単体のシステムだと、既存のイントラネットと連携するような製品はあるが、DBが備わっていてそれ自身でアプリケーションを開発できるものはなかった。将来的に考えても、DBと一体型であればアプリケーションを使い続けることができる」と選定理由を語る。
※クリックすると拡大画像が見られます
デジタル部門を味方に、経営陣を繰り返し説得
また偶然に、情報システム全体を担当するデジタル部門でも活用していたDBのリプレースを検討していて、一緒に活用していけそうな見通しが立った。その際、「SmartDBは業務部署が自らアプリを開発できるというコンセプトの製品であり、全学のデジタル戦略を進めるデジタル部門には迷惑をかけないので、バックオフィスのデジタル化にチャレンジさせてほしい」と訴え、デジタル部門の協力を得たという。他方で上長や経営陣に対しては、デジタル化で業務の目詰まりをどのように改善できるかを説き、製品比較表や機能表を作るなどの工夫をして、何度も繰り返し説得を続けた。
業務デジタル化に向けて動き出したのは2019年の初冬だったが、その後新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、デジタル面では学内のオンライン授業対策を優先せざるを得ず、導入の検討はいったん棚上げになってしまう。ところが、コロナ禍で申請書類を紙で回す作業の不自由さが際立つ形となり、ペーパーレス化の機運が上層部を含め学内で高まりを見せることになった。その結果佐野学園は、2020年11月にSmartDBを導入した。