コロナ禍による消費者ニーズの変化--オンラインと実店舗のシームレスな融合が加速

河部恭紀 (編集部)

2021-09-09 13:44

 自動認識システムを提供するゼブラ・テクノロジーズ・ジャパンは9月7日、第13回「小売業界のテクノロジー改革に関するグローバル調査」の結果を発表した。新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた買い物客や小売業者の意識と行動に見られた変化を明らかにしたという。

 コロナ禍により小売業は、「オンラインと実店舗のシームレスな融合の加速」「実店舗でのピックアップ増加による在庫・返品管理の複雑化」「安全重視による非接触への対応」といった課題に直面することになったと同社社長の古川正知氏は説明する。

オンラインと実店舗のシームレスな融合の加速

 買い物客は実店舗とオンラインでシームレスなショッピング体験を求めており、欲しいものが欲しい時に見つかるか、という視点で柔軟かつ瞬時に購買経路を使い分けている。そのため、商品が店頭で購入できない場合はオンラインに切り替えて購入しようとし、また逆も然りだという。

 調査結果によれば、スマートフォンやタブレットを使ったモバイル注文が増加し、前年比5ポイント増の72%に。生鮮食品のような分野でも同様で、前年比11ポイント増の54%となっている。82%がモバイルでの注文を続ける可能性が高いと回答している。

 商品の購入や受け取りで購買客が最も好むのは「オンラインで購入して自宅に配送」で、「店頭で購入して大型商品や在庫切れの場合に店舗から配送」「オンラインで購入して店頭で受け取る」がそれに続き、流通経路が多様化している。84%の購買客は即日配送に追加料金を支払うと回答し、前年比8ポイント増となっている。

 コロナ禍を受けて小売側も実店舗やオンラインにより多くの投資をしているが、消費者の評価が上がっているかというと必ずしもそうではない。全体的な顧客満足度は、実店舗で前年比6ポイント減の76%、オンラインで前年比5ポイント減の73%となっている。基本的な項目でも低下しており、実店舗では「製品の在庫状況」が前年比11ポイント減の74%で、オンラインでは「配達のタイミング」が前年比6ポイント減の66%となった。

 このような課題がある一方で、小売経営者の4分の3近くはオンライン注文の経費削減を迫られている。購買体験を損なうことなく効率的な投資を進めるには、ワークフローを最適化し、店舗従業員がより効率的に働けるように支援し、注文処理業務をより迅速にできるようにする必要があるという。85%の店舗従業員もテクノロジーの導入が安全かつ快適で便利な体験を提供するのに役立つと考えている。

 テクノロジーが不可欠であるという点で小売経営者と店舗従業員の意見は一致しているが、リソースとトレーニングについては見解の相違がある。「店舗に人材が十分に配置されていると思う」に小売経営者の88%は同意したが、店舗従業員では69%だった。「オンラインでの注文/返品の増加に対応できるように、トレーニングを十分に受けていると思う」には、小売経営者の89%が同意したのに対して店舗従業員では71%だった。

 このことから、オムニチャネルへの対応をテクノロジーによって加速させ、店舗従業員のトレーニングを簡素化し、出来るだけ早く従業員を戦力化させることの重要性が示唆されていると古川氏は説明する。

実店舗でのピックアップ増加による在庫・返品管理の複雑化

 在庫・返品管理の複雑化には、商品をオンラインで購入して店頭で受け取るBOPIS(Buy Online Pick-up In Store)などがコロナ禍で進んだことが影響している。店舗の在庫がダイナミックに変化するという状況が生じることで「欲しい商品の在庫切れ」(41%)や「商品棚に目当ての商品がなかった」(31%)という事態が起こりやすくなり、購買客が商品を購入せずに店を出る主な要因となっている。

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