リクルートと信州大学は、航空写真を人工知能(AI)で解析する共同研究を通じて、97.7%の精度で特定農地区分を検出することに成功したと発表した。地理情報データとして活用することで、農業の活性化などに役立てたいとしている。
共同研究は、リクルートのアドバンスドテクノロジーラボと信州大学農学部が、「水田活用における畦畔(けいはん)管理の効率化に関する取り組み」として、2020年12月に開始した。畦畔は水田を取り囲む盛土などの部分で、水田の中の水が外に漏えいしないようにしたり、大雨時などに水を貯留したりするなどの重要な役割を担う。形状の維持や草刈りで病虫害発生を抑制するなどの管理作業が必要になる。
赤線枠内が畦畔(けいはん)
山間部や山間部と平地の間に位置する中山間地域の水田の畦畔は、平地の水田の畦畔に比べて傾斜の角度や面積が大きいといい、過大な管理負担やコストが課題だとする。形状が複雑で測量なども難しく、山間部や中山間地域の水田農業の改善が進まない一因になっているという。
今回の共同研究では、まず信州大学農学部が、長野県林務部作成の精密標高データを利用して地理情報システム(GIS)で畦畔ポリゴンと圃場ポリゴンを作成し、畦畔の面積や傾斜角、農地に占める畦畔の割合(畦畔率)を計測、可視化することに取り組んだ。しかし、ポリゴンを手作業で作成しており、煩雑さが問題だった。
AI解析とポリゴン作成のイメージ
この改善のためにリクルートが開発するディープラーニングなどのAI技術と画像処理技術を応用。航空写真と精密標高データを組み合わせて、水田の圃場部分の「水張領域」と「畦畔領域」を判別し、それぞれポリゴンを自動作成するAIモデルを作成した。水張領域と畦畔領域、その他の3区分を97.7%の精度で判定することに成功した。これを利用し、長野県全域の水田約5万ヘクタールおけるGIS用座標付のポリゴンデータを作成している。
今後は信州大学が研究を引き継ぎ、検知精度のさらなる向上と、長野県以外の地域の水田にも適用可能な汎用性の確立を目指した開発を続けるという。
検知精度向上の取り組み