JAXAとNEC、静止軌道上でGPS航法を実現--「静止衛星用GPS受信機」を活用

NO BUDGET

2021-02-25 07:00

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)、NEC、NECスペーステクノロジー(NECスペース)は、GPS(全地球測位システム)衛星からのGPS信号を利用して衛星の時刻/位置/速度を高精度に決定するGPS航法を国内で初めて静止軌道上で実現したという。

 これにより、自律的な航法や軌道制御による運用効率化、衛星画像の幾何補正精度向上、衛星搭載システムの時刻基準の高精度化など、静止衛星の能力の大幅な向上に寄与するとしている。

静止軌道におけるGPS信号の受信イメージ(出典:JAXA、NEC、NECスペース)
静止軌道におけるGPS信号の受信イメージ(出典:JAXA、NEC、NECスペース)

 今回の取り組みは、2020年11月29日に打ち上げられた光データ中継衛星に搭載された「静止衛星用GPS受信機」を活用した。

 GPS航法とは、GPS衛星から送信されているGPS信号を利用して、GPS受信機と複数のGPS衛星の間の距離と、GPS受信機の時刻のずれを測定することで、GPS受信機の時刻/位置/速度を高精度に決定すること。

 この航法はこれまで、低軌道衛星において高精度な軌道決定、衛星搭載システムの時刻基準の高精度化や自律的な軌道制御による運用効率化などに用いられてきた。

 だが、GPS衛星は地表に向かってGPS信号を送信しているため、GPS衛星よりも高い高度(約3万6000km)に位置する静止衛星には、地球のほぼ反対側にある遠く離れたGPS衛星からの微弱なGPS信号は届くものの、微弱なGPS信号を捉えることは難しいため、静止衛星でのGPS航法の利用は普及していなかった。

 「静止衛星用GPS受信機」は、JAXAとNECが共同で開発した微弱なGPS信号の捕捉/追尾/メッセージ復号を可能とする技術を用いている。今回静止衛星において軌道上でGPS信号を4機以上のGPS衛星から受信して、安定したGPS航法を継続できると確認した。

 これらの研究開発成果を踏まえ、衛星用通信装置を国内外の多数の衛星に搭載してきた衛星搭載機器メーカーのNECスペースでは、この受信機の開発/製造/販売を担当し、2021年春から国内外で販売を開始する。

 また、JAXAとNECはこの受信機のさらなる改良を継続しており、JAXAで現在開発中の技術試験衛星9号機(2023年度に打ち上げ予定)では、改良した静止衛星用GPS受信機を用いた自律的な軌道制御を実施すると計画している。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]