IT資産管理(ITAM)企業のLansweeperによる新しい調査が正しければ、多くのエンタープライズ企業は、これから何年間も、少なくともハードウェアを大規模に入れ替えるまでは「Windows 10」を使い続ける可能性があるようだ。
提供:Lansweeper
Lansweeperが集計した「Windows 11」準備状況のデータによると、Microsoftの最小ハードウェア要件が厳しいため、ワークステーションの55%がWindows 11にアップグレードできない可能性があるという。
米ZDNetに寄稿するEd Bott氏が伝えた通り、2019年より前に発売されたハードウェアは、CPUとして比較的新しい第7世代の「Intel Core」や第1世代の「AMD Zen」を搭載したものなど、要件を満たさないものが多い。Microsoftは要件を厳しくしたことについて、信頼性とセキュリティと互換性を高めるためだとしている。
Lansweeperは、Windows 11準備状況のデータについて、6万の組織が保有する約3000万台のWindowsデバイスを調査した結果に基づいているため、エンタープライズのハードウェアについての有効な標本だとしている。
Microsoftが示したWindows 11のCPUの要件を満たすマシンはわずか44%で、「Trusted Platform Module(TPM)2.0」の要件を満たすものも52.5%にとどまった。ただ、RAMの容量に関する要件は大半(91.05%)が満たしている。
ハードウェアの要件としては、対応したCPUのほかに、4GB以上のメモリーと64GB以上のストレージ、UEFIのセキュアブートの有効化、「DirectX 12」以上(WDDM 2.0ドライバ)に対応したグラフィックスカード、「Trusted Platform Module(TPM)2.0」などが必要になる。
また、Windows 11にアップグレードしたいエンタープライズには、もう1つ問題がある。「Microsoft HyperV」「VMware」「Oracle VM Virtual Box」といった仮想マシン(VM)プラットフォームにも、Microsoftの最小ハードウェア要件が適用される点だ。
Lansweeperによると、VMはTPMの要件が「厳しい」ほか、すべての要件が全般的に「あまり甘くない」という。
Lansweeperはブログ記事で、「われわれの調査によると、(VMだと)CPUの互換性がわずかに上がって44.9%になるが、RAMが十分なものは66.4%にとどまる」と説明している。
また、TPM 2.0が必要ということは、この要件を満たすようにするため、システム管理者は膨大な作業が必要になるかもしれない。
「TPMについては厳しい知らせがある。すべての仮想ワークステーションのうち、TPM 2.0が有効になっているものはわずか0.23%だ。これは、まったくの驚きというわけではない。これまでTPMはWindowsに必要とはされていなかったため、仮想マシンをTPMに対応させるためのTPMパススルー(vTPM)はあるものの、ほとんど使われていない。つまり、VMのワークステーションの大半は、まず修正してvTPMを導入しないと、Windows 11にアップグレードできない」
Lansweeperはまた、「Microsoftが今後、同じような要件のサーバー向けOSを作った場合」、98%はTPMのため「アップグレードできない」と推算している。
驚きの数字が並ぶ一方で、こうしたエンタープライズ向けハードウェアのすべてが、Windows 11のハードウェア要件を満たすように再構成できないわけではない。とはいえ、MicrosoftはWindows 10のサポートを2025年10月に終了するが、それを乗り切るため、Windows管理者は多くの労力を割く必要があるだろう。
Mary Jo Foley氏が8月に米ZDNetで報じた通り、要件を満たしていないハードウェアでWindows 11を動かすことはできるが、これらのデバイスはWindows Updateから今後のアップデートを受けられないかもしれない。アップグレードした端末がサポートされていない状態になるとの通知を受ける可能性があるという。
「サポートされていない状態」とは、この場合、「セキュリティやドライバーのアップデートが含まれている(あるいは含まれていない)かもしれない。結果的に、そのPCは互換性の問題が発生する、使用できない状態になる、Microsoftのサポートが解決を支援できない問題に遭遇する、保証の対象外となるといったことに直面する可能性がある」ということだとMicrosoftは米ZDNetに対して説明した。
米ZDNetはLansweeperが引用した数字についてMicrosoftにコメントを求めたが、回答は得られていない。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。