日本マイクロソフトは、「Microsoft Azure」に関するメディア向けの勉強会を開催した。同社は定期的に勉強会を開催、4回目の今回は同社が先頃開催した「Microsoft Japan Digital Days」でのAzure関連の事例や技術動向を紹介した。
Microsoft Japan Digital Daysでは、Azure関連で「Modernizing Enterprise Java Applications」「リーンスタートアップアジャイルへの挑戦~東京証券取引所のETFプラットフォーム『CONNEQTOR』で実現したDX~」「あなたの知らないAzureインフラの世界」などのセッションを公開。勉強会ではこれらセッションの概要を振り返った。
まず「Modernizing Enterprise Java Applications」のセッションは、老朽化するシステムのJavaコードのモダナイズ事例や、開発手法に言及したものになる。事例では、米国カリフォルニアの食料品店Raleyが、コロナ禍で増加するオンライン注文に対応するため、サーバーなどのITシステムインフラをコードベースで運用管理する「Infrastructure as Code」(IaC)に着手したケースを紹介した。
説明したAzure ビジネス本部 マーケットデベロップメント部 シニアプロダクトマネージャー Azure SMEの廣瀬一海氏は、「その中核を担ったのが、(Spring Bootアプリケーションの開発と管理を簡素化する)Azure Spring Cloud」と述べた。マイクロサービスへの移行を加速させ、システムを2週間前倒しで本番稼働させ、休日のアクセス増への対応にも成功したとのこと。従来のJavaの開発はモノリシック(一枚岩)だったが、「マイクロサービスの開発は一朝一夕では難しい。早い着手が必要」(廣瀬氏)といい、リホスト、リプラットフォーム、リファクター、リアーキテクト、リビルド、リプレース、リタイア――「7R」を用いたモダナイズの検討を推奨した。
日本マイクロソフト Azure ビジネス本部 マーケットデベロップメント部 シニアプロダクトマネージャー Azure SMEの廣瀬一海氏
次に、「リーンスタートアップアジャイルへの挑戦」のセッションは、東京証券取引所のETF(上場投資信託)プラットフォームで大口取り引きを行う金融機関向け売買基幹の「RFQ(Request For Quote)」のオンライン化を取り上げたもの。廣瀬氏によれば、東京証券取引所にとっては、アジャイル文化を取り込むものだったという。AzureのPaaSやSaaSを組み合わせて構築し、「Microsoft Azureを道具として使いこなしていただいた事例」(廣瀬氏)とした。
「あなたの知らないAzureインフラの世界」では、Azureの各リージョンで構成されている複数のアベイラビリティーゾーン(AZ:可用性ゾーン)について、AZ間のレイテンシー(通信の遅延時間)を検証した内容などを紹介した。
Go言語で書かれたオープンソースのネットワーク性能測定ツール「Ethr」でのベンチマークの結果、レイテンシーが平均で1ミリ秒、99パーセンタイルでも2ミリ秒を下回った。またAzure VM(仮想マシン)起動速度も測定した。CPUやストレージなど構成を変更した8種類のAzure VMの起動速度は38~73秒だったとする。Azureには、機械学習でユーザーが実行するVMの作成を事前に準備する機能を備わっている。この機能の使用では33~80秒とばらつきが生じた。VMが使用するストレージが大きな影響を与えるとし、「Azure Storage」に格納しない「エフェメラルOSディスク」の利用を推奨した。
AZ間のレイテンシーの検証結果
Microsoftは、開発者やITプロフェッショナル向けの年次イベント「Ignite 2021」を11月3日からオンラインで開催する予定。Azureビジネス本部 マーケットデベロップメント部 プロダクトマネージャー Azure SMEの佐藤壮一氏は、「ハイブリッドワークの観点からWindows 11やMicrosoft Teamsなどにも焦点を当てている」などのイベントテーマを紹介。一般提供を開始した「Azure Stack HCI」の機能アップデートや、11月9日にはオンラインイベントで「Visual Studio 2022」や「.NET 6」に関する新たな情報もあると今後の動向を紹介した。
日本マイクロソフト Azureビジネス本部 マーケットデベロップメント部 プロダクトマネージャー Azure SMEの佐藤壮一氏