米金融大手Capital Oneの機械学習(ML)センターおよびエンタープライズMLプラットフォームの責任者であるAbhijit Bose氏は、雇用者と顧客の双方のためにMLと人工知能(AI)を用いてリアルタイムのインテリジェントな意思決定やエクスペリエンスを組織全体に取り込むという作業に従事するチームを統括している。これは、米国の10大銀行の1つである同社においてもかなり骨の折れる仕事であることに間違いはない。
実際のところ、同氏のチームが2021年に注力しているのは、スケーラビリティーの高いMLの土台を作り上げることだ。
Bose氏は米ZDNetに対して、「多くの企業が社内全体にMLを配備したり、MLやAIのスケーラビリティーを実現しようと苦労している」と述べ、「Amazon製品上で何かを作り上げようとしたり、自らのデータを用いてMLモデルを実験しようとする人々は常にいるものの、結局のところすべて頓挫している。実際にそうしたモデルを本番環境に移行し、不正トランザクションの検出といったミッションクリティカルなアプリケーションで毎日24時間運用するというところに持っていくのが最も難しいのだ」と続けた。
Capital Oneはこうした課題に取り組む上で、3つのアプローチを採用しているという。Bose氏によると、それらは「土台となるプラットフォームの構築と、適切に管理された責任あるAIの構築の保証、適切な人材の雇用」だという。
これら3つのアプローチについて、Bose氏は以下のように説明している。
柔軟性の高い、土台となるプラットフォームの構築
「まず、スケーラビリティーを有しており、変化のスピードが極めて速いこの分野における最新のトレンドに柔軟に対応できる優れたMLプラットフォームを構築する必要がある。このためプラットフォームの土台は、6カ月ごとに登場するさまざまなライブラリーや、多様なテクノロジーに迅速に対応できるようなかたちで構築されなければならない。例を挙げると、われわれは『Amazon Web Services』(AWS)上で基本的なコンテナーを実行するという形態から、AWS上で『Kubeflow』のパイプラインを活用した運用形態に移行した。Kubeflowのパイプラインは、少数のIT企業でしか実装されていない洗練されたML利用形態だ。つまり、こういったプラットフォームは土台としての役割を果たすようになっているとともに、しっかりとしたかたちで実装されていなければならない。これが、現時点で大きな力を注いでいる分野だ」
責任ある、そして適切な管理を実施する
「われわれは責任ある、そして適切に管理されたかたちでMLを構築したいとも考えている。われわれの現行世代のMLモデルには数多くの統制が組み込まれており、その一部は手動であり、また他の部分はある程度自動化されている」