コングロマリット(巨大複合企業体)は時代遅れな存在になったのかもしれない。大手IT企業は、そのことに気づいているだろうか。
コングロマリットに関する最近の動きを見てみよう。
- General Electric(GE)は3社の上場企業に分割されようとしている。
- Johnson & Johnsonは、消費者向け事業を医療機器、医薬品事業から分離する予定だ。
- 東芝は会社を3社の独立した企業に分割する方針を発表した。
ほかにも色々と例を挙げることができる。例えば、AT&Tもメディア事業を分離する計画を明らかにしている。
こうしたコングロマリットの解体が起こっている理由は単純で、大きくなりすぎて動きが鈍くなってしまったからだ。会社を分割することで、分割後の企業は力を集中できるようになり、パフォーマンスを向上させることができる。成長が止まると、コングロマリットを正当化する理由も消えてしまう。コングロマリットを正当化してきた「優れた経営者はどんなビジネスでも経営できる」という主張は、徐々に色あせつつある。
「Everybody Wants to Rule the World」の著者であるRay Wang氏は、最近のインタビューで、コングロマリットの戦略には欠陥があると述べている。それでも、コングロマリットが競争力を発揮する方法はある。それには、ジョイントベンチャーを作り、エコシステムを形成し、投資家を呼び込む必要がある。Honeywellの量子ソリューション事業とCambridge Quantum Computingが合併して、新会社を設立した事例がそれだ。
Wang氏は、「既存企業がこれらの業界で革新的なスタートアップのポートフォリオを形成するには、もっとジョイントベンチャーを立ち上げていく必要がある」と説明している。「それがレガシー企業が成功する方法だ。レガシー企業は、ポートフォリオを支配する企業であるべきだ」
ここでの問題は、大手IT企業はいつレガシー企業になるのかということだ。大手IT企業は、コングロマリットに準じるような企業体を形成しつつある。それが可能なのは、それらの企業が成長しているからだ。しかし、大手IT企業にも、従来のコングロマリットが晒されているのと同じ力が働いており、いずれは分割の方向に進むことになる可能性もある。事実、Hewlett-Packard(HP)がHP Inc.とHewlett Packard Enterprise(HPE)に分割された例がある。