優れた人材の発掘は困難であり、そうした人材がハッピーな気持ちで働き続けられるようにするのはさらに困難な時代にあって、ロボティックプロセスオートメーション(RPA)に対する関心は高まるばかりと言える。このテクノロジーによって反復作業を自動化することで、有能な人材が企業や従業員にとってより実りある、高い価値を有した作業に集中できるようになるためだ。
Adobeの最高情報責任者(CIO)Cynthia Stoddard氏は、RPAの導入を「文化の変革」だと表現している。
提供:Adobe
Gartnerによると、RPAソフトウェアに対する支出は2021年に世界で18億9000万ドル(約2100億円)に達する見通しだという。同社のアナリストは、世界の大企業の90%は2022年までに何らかのかたちでRPAを導入すると予測している。
従業員はRPAテクノロジーを用いることで、データを検索したり、何らかの応答を起動できるようにしたり、トランザクションを実行するといった業務プロセスやITプロセスの自動化に向けたスクリプトを作成できるようになる。こういったスクリプトはしばしば「ボット」と呼ばれている。
米調査会社Forrester Researchは、世の中がRPAと自動化に向けた新たな段階に突入しつつあると確信している。また、今後の10年で「自律的な企業」が台頭してくるという。こうした企業では、人工知能(AI)と自動化が中核に据えられ、その運用モデルは自己認識/自己修正/自律型のデジタルテクノロジーによって実現される。
これがRPAの力であり、ソフトウェアがいったん稼働するようになれば、最高情報責任者(CIO)は気楽に構え、効率が向上していくのを見ているだけでよくなるかもしれない。
ただ、自動化を活用できる業務があるのは明らかだとはいえ、RPAの運用を軌道に乗せるのは困難であり、長年続けてきたプラクティスの変革は一朝一夕にできない場合もある。
これこそ、AdobeのCIOであるCynthia Stoddard氏が認識している点だ。Stoddard氏はここ数年、同社での自動化の導入を監督してきている。同氏によると、RPAの導入には慎重かつ熟考したアプローチが必要になるという。
Stoddard氏は「これは文化の変革だ。自らのビジョンと発言に忠実である必要がある」と述べ、「率直さを欠いていれば、人々はおびえ、テクノロジーに拒否反応を示すだろう。オープンさと透明性を持ち、人々が変革の道を歩んでいけるよう支援してほしい」と続けた。
RPAは企業幹部にとって導入したいと思うテクノロジーかもしれないが、従業員がその影響を懸念した際、特に自らの仕事がRPAの対象となり始めた場合には、現場での受け入れがスムーズに進むとは限らない。数年前の初期レポートでは、ロボットによる自動化が進む結果、2030年までに世界で最大8億人が職を失うと予想されていた。