IT人材不足はこれまで以上に深刻になっている。最高情報責任者(CIO)は、デジタルトランスフォーメーション(DX)プロジェクトに必要な人材を確保するために、人材の雇用、維持のための効果的な戦略を強く必要としている。
これが、Harvey Nash Groupが発表した調査レポート「Digital Leadership Report」の要点だ。この調査では、世界のIT担当役員のうち3分の2以上(67%)が、IT人材不足が原因で変化についていけていないと考えていることが明らかになった。
Harvey Nash Groupの最高経営責任者(CEO)Bev White氏によれば、他社のCIOとの会話から判断すると、企業の戦略に必要なスキルを持つIT人材が不足している企業では、DXの目標を達成するのが非常に困難になりそうだという。
「そうした企業は、やるべきことを達成できないだろう」と同氏は言う。「一部のITリーダーが素晴らしい変革を実現していることを考えれば、それは非常にまずい結果だ」
White氏は、デジタル化が重視されている状況が続いていることから(企業の60%は今後12カ月間のテクノロジー投資を増やす意向を示している)、優れたIT技術者は今後も引く手あまただろうと話す。
テクノロジーに対する投資意欲が強い状況が続くことは、CIOにとっても朗報だが、その代わりCIOが受けるプレッシャーも大きくなる。特に問題になるのがリソースの確保だ。新しいプロジェクトには優秀なスタッフが必要だが、そうした人材の獲得や維持はますます難しくなっている。
White氏は、「人材獲得競争は非常に激しくなっており、多くの企業は、技術者に今の仕事を辞めさせて自分の会社に入社させるために、あらゆる手を尽くしている」と話す。「従って、新しい人材を呼び込もうとするだけではなく、裏口をしっかりと閉めて、人材が流出しないようにすることが重要になっている。今やCIOにとって、人材不足の危機は大きな課題だ」
経営陣もこの状況を理解している。Gartnerによれば、企業の取締役会のうち52%が、2022年に向けての最優先の戦略課題に人材の獲得と維持を挙げており、この問題に対する関心は、2021年と比べて86%も大きくなっているという。同社は、多くの企業がDXの取り組みを加速させていることから、人材不足は経営陣にとって以前よりもはるかに大きな問題になっていると述べている。
Harvey Nashの調査によれば、世界の企業の61%が、今後12カ月間でIT部門の人員を過去最高の水準まで増やす予定である一方で、IT担当役員の10人に4人は、自社の人材が他社からより高い報酬で引き抜かれているため、人材を期待しているほど長く引き留められていないと答えている。
スキルギャップの観点から言えば、もっとも需要が高かったスキルはサイバーセキュリティ(43%)で、この職種に対する需要は1年前よりも25%近く増えていた。2位と3位はビッグデータ/アナリティクス(40%)とテクニカルアーキテクチャー(34%)だった。一方、開発者(32%)の不足は加速し、これまでの数年と比べて最も増加している。