企業は今、激しいIT人材獲得競争のまっただ中にある。優秀な人材に対する需要はこれまでになく高まっており、最高情報責任者(CIO)は、人材の流出を防ぐための戦略を立てる必要がある。
多くの専門家は、今いる人材の満足度を維持するためにはトレーニングと人材開発が鍵になる可能性が高いと考えているが、従業員のスキルアップはそう簡単ではないことも理解している。IDCとSalesforceの調査によれば、英国の労働者の6人に1人は、ITスキルが低いか、スキルをまったく持っていないという。
では組織のIT担当役員は、どうすれば従業員に必要なスキルを身に付けさせることができるだろうか。ここでは、4人のリーダーから、スタッフをスキルアップさせるためのベストプラクティスについて話を聞く。
1.ITスキルとコミュニケーションスキルを同時に身に付けさせる
AdobeのCIOであるCynthia Stoddard氏は、技術者をスキルアップさせるために重要なことが2つあると述べている。ソフトスキルを身に付けさせることと、従業員の技術的な能力を最新の状態に保つことだ。
「ITの分野の人間は、自分が得意としている分野にとらわれてしまいがちだ」と同氏は言う。「CIOは、スタッフの目を開かせ、どうすれば新しい技術を利用できるか、古いものと共存させられるか、あるいは古いものを新しいもので置き換えられるかに目を向けさせる必要がある。そのためには、スタッフに実験をしたり、物事を試すための時間を与える必要があり、それには技術面でのトレーニングと教育が非常に重要な役割を果たす」
Stoddard氏はまた、IT担当役員は、スタッフが継続的にコミュニケーションスキルを磨き続けられるようにする必要があると述べている。同氏によれば、ITプロフェッショナルにはさまざまなレベルのコミュニケーションができる能力が必要であり、他の人にプレゼンテーションを行う機会を与える必要があるという。
「私の組織で今力を入れていることの1つが、ストーリーをより上手に伝えることだ。アイデアを売り込もうとするときや、プロジェクトの価値を伝えようとするとき、あるいは技術を変更することで得られる価値について説明しようとするときなど、その時々によって組織の中で話をする相手は変わってくる」と同氏は言う。
「そのため私たちは、相手によってストーリーの伝え方をどう変えるべきかに焦点を当てて、スタッフが技術的な能力を高めるだけでなく、そうした能力を発揮できるコミュニケーションスキルも身に付けられるようにしている」