「選択と集中」という言葉はまだ使わない--AWSパートナーサミット

大場みのり (編集部)

2022-03-17 12:28

 アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSジャパン)は3月16~17日、「AWS Partner Summit Japan 2022」を開催。本記事では、16日の基調講演の様子をお伝えする。

執行役員 パートナーアライアンス統括本部長の渡邉宗行氏
執行役員 パートナーアライアンス統括本部長の渡邉宗行氏

 冒頭で、執行役員 パートナーアライアンス統括本部長の渡邉宗行氏は、「過去4年間、われわれは『選択と集中』という言葉は使わないとお話ししてきた。今もこの考えは変わらない。お客さまがクラウド活用によりイノベーションを起こせる領域がまだある以上、またはクラウドについて理解はできたが実際には活用できていない領域の方が多い以上、当社は領域を狭めることなく全ての規模・業種・地域のお客さまに対して、全国のパートナーの皆さんと一緒に、クラウドによるビジネスイノベーションを届けたいと願っている」と語った。

 AWSは2021年、パートナーのグローバルコミュニティー「AWSパートナーネットワーク」(APN)の新たな仕組みとして「AWSパートナーパス」を発表した。これまではパートナーを「テクノロジー」と「コンサルティング」で区別していたが、この仕組みでは顧客に提供する製品やサービス「オファリング」を基にパートナーを分けている。製品やサービス内容によっては、複数のパスを取得することも可能である。

 AWSパートナーパスは、「ソフトウェア」「ハードウェア」「サービス」「トレーニング」「ディストリビューション」という5つのパスで構成されている(図1)。ソフトウェアパスはAWS上で実行、またはAWSと統合するソフトウェアを開発するパートナー、ハードウェアパスはAWSと連携して稼働するハードウェアを開発するパートナー、サービスパスはAWSを活用してコンサルティングなどのサービスを提供するパートナー、トレーニングパスはAWSのトレーニングサービスに携わるパートナー、ディストリビューションパスはAWSソリューションの再販と開発のために他社を募集・教育しているパートナーを対象としている。

 渡邉氏は「この『パス』は英語で書くと“Path”で、回すパスではなく『道筋』という意味。『お客さまのクラウドジャーニーを支援する道筋』とご理解いただきたい」と説明した。

図1(出典:AWSジャパン) 図1(出典:AWSジャパン)
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 AWS Partner Summit Japan 2022には、APNパートナーとして、法人向けの技術支援を行うクラスメソッドも登壇した。同社は2008年にAWSの活用を開始し、2010年にユーザーグループに参加。2011年から自社でのAWS活用ノウハウを顧客に届けるため、コンサルティング事業を行っている。2013年に同事業が本格化し、2014年にAWSのプレミアパートナーに認定された。

 AWSのコンサルティング事業を開始した2011年以前は従業員数50人ほどで受託システム開発のみを行っていたが、同事業を始めてからは従業員数、売り上げともに右肩上がりとなっている。その間クラスメソッドは、事例の公開やイベントへの参加によりAWSの技術ノウハウを発信したり、24時間対応やセキュリティ設定の標準化によりサービスの向上に取り組んだりした。その後、顧客関係管理(CRM)や分析基盤など、自社開発のシステムも提供するようになった。現在同社は、この分野においてソフトウェアパスの獲得を目指している。

 近年は顧客が自社でAWSを使いこなしたいと希望するケースが増えていることから、エンジニアの育成やプロジェクトの立ち上げ・推進も支援し、トレーニングパスを取得した。

 AWSのコンサルティング事業を始めた頃、サービス数は十数個しかなかったが、現在は200個以上になった。人工知能(AI)、IoT、ネットワークなどさまざまな技術のノウハウを取得するとともに、メディアや公共など幅広い分野の技術を支援し、サービスパスも獲得した。

 最近はAWSだけでなくその周辺にある他社の良質な製品の販売を支援したり、AWSと他社の製品を連携させたりしている。

 同社は事業拡大とともに、組織変容にも取り組んでいる。例えば、海外製品の日本での展開支援を支援する専門組織を立ち上げた。また、設立当初の従業員はエンジニアのみだったが、技術支援後も長期にわたって顧客と良い関係を築けるよう、マーケティングやインサイド/アカウントセールスなど営業組織を設置。加えて、「APACでナンバーワンの企業になる」という同社の長期的な目標に向け、顧客と共同で企画を運営したり、グローバルでの開発体制を整備したりしている。

 クラスメソッド 代表取締役社長の横田聡氏は「AWSのビジネスを始めた頃は50人程度の小さな会社だったが、10年かけて全方位でサービスを拡充した。組織そのものも変えながら、今後のクラウドビジネスとAWSの成長にどうにかして食らいついていけるように頑張りたい」と意気込みを述べた。

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