研究者らは、ソーシャルエンジニアリング攻撃が急増し、「Web 3.0」とメタバースを席巻することになると予測している。
Web 3.0は、インターネットの次なる時代を表すために生まれた言葉だ。ウェブはコンテンツが掲載されているだけのページから、ソーシャルメディアの成長を促す場へと移行し、現在はWeb 3.0の旗印の下、分散型インターネットの概念が議論されるようになった。
この変貌の一部には、「メタバース」も含めることができるだろう。この3D環境の仮想世界は、個人や仕事のソーシャルなつながりを促進できる。メタバースにおけるIDが、暗号資産(仮想通貨)ウォレットや非代替性トークン(NFT)、そしてさまざまなスマート契約と結びつけられる可能性もある。
技術ベンダーがこうした概念に取り組むなか、Cisco Talosのサイバーセキュリティ研究者らは、Web 3.0とメタバースが直面するかもしれない脅威について、見解を明らかにしている。
NFTマーケットプレイスOpenSeaのユーザーは最近、一連のフィッシング攻撃の標的になった。被害者は、悪意のある契約取引に署名をするようにだまされ、NFTを盗み取られたが、これは将来より一般的になるかもしれない攻撃形態を浮き彫りにしているかもしれない。
同社のチームが最初に取り上げているのは、ウォレットアドレスを覚えやすい形式に短縮するために用いられるEthereum Name Service(ENS)や、今後登場する類似サービスを使用する場合の問題だ。
ENSドメインの将来的な価値を見越して、「businessname.eth」などのアドレスを、あらかじめ登録する人も出てくるだろう。インターネットのドメイン名はICANNによって管理されており、「商標ベースのドメイン名における紛争」を解決するために「統一ドメイン名の紛争解決ポリシー」が確立されている。しかし、ENSのドメイン空間にはそのようなフレームワークが存在しない。ブロックチェーンに記録されるENSドメインは、簡単に削除できず、これらのアドレスがフィッシング攻撃で悪用される可能性がある。
「cisco.eth、wellsfargo.eth、foxnews.ethなどのENSドメインを、これらの商標を実際に所有する企業が所有していなくても驚かない。その意図が不明な第3者が、これらの名前をいち早く登録し、所有している可能性がある」とTalosは述べている。「そこに潜むリスクは明確だ」
さらに、ENSドメインの登録者が自身の名前を使用した場合、アドレスの匿名性が失われ、暗号資産ウォレットに保有している資金を他人に知らせてしまう恐れがある。そうすると、攻撃者に選択的に狙われるリスクも高まるだろう。