LayerXは5月10日、「バクラク経費精算」を発表した。顧客の課題を解決するテクノロジーをコアとした「次世代型」の経費精算システムをうたう。
バクラク経費精算は、領収書読み取りに特化したAI-OCR(人工知能技術を組み合わせた光学文字認識)、申請ミス・不正申請防止機能、チャットツール連携、関連稟議とのひも付け、交通費精算、自動仕訳と会計ソフト連携を搭載。電子帳簿保存法に対応し、請求書を伴う支払申請も「バクラク申請」「バクラク請求書」を利用して工数を削減できる。
SaaS事業部 プロダクトマネージャーの飯沼広基氏は、全ての企業・従業員が経費精算に時間を費やしており、経費精算システムが提供事業者の売上高成長ベースで前年比40%超の成長市場だと説明。提供事業者が既に多い経費精算市場に“業界最後発"で参入する理由として、テクノロジーと体験とが両立しているサービスがまだないことを挙げる。
LayerXの調査によると、経費精算システム導入済みの企業の7割近くが経費申請手続きを「面倒」「やや面倒」と感じており、経費精算システムに求めることとして「使い方を教わらなくても使える」「操作回数が少なく、サクサク動く」「領収書の転記作業がない」といった体験を重視した回答を上位に挙げる傾向があるという。
「テクノロジーと体験に分断が起き、片方のみのサービスが大半であることから、多くの顧客が面倒と感じている」(飯沼氏)
同社Software as a Service(SaaS)サービスである「バクラク」シリーズは1年で3サービスを公開し、アップデートが年間500回というスピード感のあるサービス開発と、顧客からのフィードバックをもとに継続的な機能アップデートを積み上げることを特徴としているという。一方、バクラク経費精算は、要件検討・開発期間が6カ月以上、ヒアリング回数が100回以上と顧客の課題を正確に把握し、解決するために時間をかけている。
AI-OCRは、経費精算システムへの搭載が目新しいものではなくなっているが、ユーザーはさまざまな課題を感じており、「テクノロジーが体験に結びついていない」と飯沼氏は指摘。例えば、領収書を1枚アップロードするごとにOCRの読み取りに数十秒待つ必要がり、読み取れなかった値を画面と領収書を見ながら手入力するという作業を領収書の数だけ繰り返す必要があるという。
バクラク経費精算では、領収書をまとめてアップロードして数秒でデータ化し、読み取れなかった値を1画面で簡単に手入力できると飯沼氏。横向きでアップロードされた領収書も画面上で操作しやすいよう縦向きに補正される。
領収書をまとめてアップロード可能
電子帳簿保存法の要件を満たしていない場合、アップロード時にメッセージが表示されるので、経理担当者の負担を減らすことが可能。また、日付と金額が一致している申請が他にないかが一覧表示されるので二重申請を防止できる(電子帳簿保存法や二重申請の防止に関連した機能は近日提供予定)。
アップロードに問題がある場合はメッセージが表示
バクラク経費精算のリリースにより、バクラクは請求書SaaSから法人支出管理(Business Spend Management:BSM)SaaSとして展開していくと代表取締役最高経営責任者(CEO)の福島良典氏は述べる。
法人支出管理は、「法人がお金を使う全方法(請求書、経費精算、稟議、決算)に対する一気通貫(ワンストップ)のソフトウェア群」と福島氏。法人支出は経理のみの課題だけではなく、全社(経営)が関わる問題なため一気通貫が重要と続ける。
同社では、法人支出管理SaaSの次の一手として法人カードを年内に提供することも予定している。バクラク申請、バクラク経費精算、バクラク請求書、法人カード、「バクラク電子帳簿保存」といった製品群により、請求書・領収書の回収から稟議、承認、データ入力、仕訳・支払データ作成、支払・管理ソフト反映、保管/税務・監査対応までの法人支出業務で発生するアナログ課題をワンストップで自動化・解決することを目指しているという。
シリーズとしては、バクラク請求書が2021年1月にリリースされたが、稟議(購買申請・支払依頼)と請求データが結びついている必要があるという要望により、バクラク申請が2021年4月にリリース。そして、保管データの法対応の求めに応じるためにバクラク電子帳簿保存が2021年12月にリリースされ、経費精算への対応がないと稟議システムをバクラク申請に寄せられないという意見からバクラク経費精算が今回のリリースとなった。
福島氏は、顧客の声に従ってサービスを拡充してきたと述べ、支出プロセスと支出手段の全てに対応できるのはバクラクシリーズだけとアピールした。