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順天堂大、双方向型の3D遠隔診療の実証に成功--AR技術など活用

國谷武史 (編集部)

2022-06-03 15:50

 順天堂大学は6月3日、拡張現実(AR)技術などを用いた3次元(3D)映像によるパーキンソン病患者の双方向型オンライン遠隔診療の実証に成功したと発表した。今後はパーキンソン病患者に特化した介護施設を運営するサンウェルズ(金沢市)と実用化に向けた検証を進めるとしている。

双方向型3Dオンライン遠隔診療システムの概要
双方向型3Dオンライン遠隔診療システムの概要

 今回の取り組みでは、Microsoftのデバイス「HoloLens 2」や空間コンピューティング基盤の「Azure Kinect DK」などを構成されるオンライン遠隔診療を用いている。実証は、東京都内の順天堂大学とサンウェルズが運営する金沢市の「PDハウス小坂」をオンラインで接続。医師と患者がそれぞれデバイスを装着し、病状の進行状態の確認や患者の動作に関する3Dデータの取得などができることを確認できたとしている。

 パーキンソン病は、国が指定する神経変性疾患の難病の1つ。1日の中で体に震えや硬直などの症状が繰り返し出たり、病状が進行すると徐々に歩行が困難になったりすると日常生活が困難になる。現状では根絶する治療法がなく、専門医の診療により薬の種類や配合をきめ細かく調整しながら服用しつつ、日々のリハビリによって身体機能の維持を図る対症療法が中心となる。

 診察は患者の家族や施設の担当者などが付き添い、医師が対面で問診や患者の身体動作の確認を行う。ただ、症状の出方は患者ごとにも1日の中でも大きく異なり、診察時だけでなく日常生活の状態も確認できるのが望ましいが、現状では難しい。特に患者が施設に入所する段階に症状が進行すると、通院がより困難になり医師の確認も機会も減少してしまう。コロナ禍がこの問題に拍車をかけているのが実情だ。

入所者の良い日常生活を維持するために施設ではさまざまなデータも活用しているという
入所者の良い日常生活を維持するために施設ではさまざまなデータも活用しているという

 順天堂大学は、2017年からオンライン診療を導入しており、この日記者会見した医学部 神経学講座の服部信孝教授は、「オンライン診療の技術も進化しており、今回は3Dの技術による双方向でのオンライン診療の可能性を確認することができた。コロナ禍で通院が難しくなっている中、こうした仕組みが今後ますます求められるだろう」と述べた。

 実証を担当した大山彦光准教授は、「パーキンソン病患者の症状は、その日の中でも日によっても大きく変動するため、診察時のスナップショットで判断しなければならない難しさがあり、日常も含めた患者の状態を見ることができず歯がゆさを感じている。特に、専門医が都市部に偏在している状況であり、地方の患者が思うような診察を受けることが難しい実態もある。

 サンウェルズは、パーキンソン病患者に特化した施設「PDハウス」を北陸や関東、関西、九州北部、北海道などで14施設運営する。代表取締役の苗代亮達氏は、「病状が進行している方からも(自宅療養時に比べて)医師から離れてしまうことへの不安の声をお聞きしており、コロナ禍で通院も思うようにできない状況にある。また、地方は専門医も非常に限られる。オンライン診療がそうした問題を解決の光になることを期待している」と語った。

 大山准教授によると、ビデオ会議システムなどを利用するオンライン診療は日常的に行われているが、2次元の平面による画面越しでは、パーキンソン病の診察のような患者の身体動作の様子までを把握するのは困難という。このため順天堂大では、日本マイクロソフトの技術協力を得て2019年から今回のシステムの開発を進める。パーキンソン病の診察における有効性が期待されていたことから、サンウェルズと実証を検討してきたという。

実証実験の概要
実証実験の概要

 実証実験では、PDハウス小坂に入所している2人の患者が協力。デバイスを装着してもらい、東京側の医師とのコミュニケーションやデバイスに投影される映像の体感などのフィードバックを検証した。反応はおおむね良好だったといい、医師側も遠隔にいる患者の状態確認や、Azure Kinect DKのカメラやセンサーで患者のデータも取得できることを確認したという。医療情報を取り扱うことから、実験を行うに当たって東京・金沢間にセキュリティを強化した通信回線も整備したという。

 大山准教授は、「実証にご協力いただいた方からは『楽しかった』と良い評価をいただいた。お一人は通信技術者で、通信回線が遅い、映像が粗いといった技術的なフィードバックもいただいている。こうした技術的な課題も含め、実用化に向けてさらに改善を進めていきたい」と話した。

 大山准教授によれば、今回の実証では双方向型3Dオンライン遠隔診療が行えるかどうかを確認した段階だといい、今後も月に1回のペースの検証を行い、実用化への開発を進めていくという。将来的には、取得したデータを経過確認などに利用したり、パーキンソン病が疑われる初診時の診断支援に活用したりいったことも期待されるとする。

 苗代氏も「将来的には全ての施設にこの仕組みを導入することで、遠隔診療を希望される方が利用できるものに整備していきたい」と話している。

順天堂大学の服部信孝教授、サンウェルズの苗代亮達代表、順天堂大学の大山彦光准教授(右から)
順天堂大学の服部信孝教授、サンウェルズの苗代亮達代表、順天堂大学の大山彦光准教授(右から)

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